劇場公開日 2022年1月28日

「人を救う、人に寄り添う、人を許す、とは…」前科者 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人を救う、人に寄り添う、人を許す、とは…

2022年1月30日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

仕事柄、保護司の方と話をする機会がこれまで何度もありました。しかし、あえてその業務内容に深く立ち入らないようにしていたので、まさか無報酬でここまで献身的に仕事をされているとは知りませんでした。本作を鑑賞して初めてその仕事の崇高さ、携わる人々の優しさや良心に触れ、頭の下がる思いがしました。

事前情報で、本作の前日譚となるテレビドラマがあったことを知り、鑑賞前にアマプラで全6話を視聴しました。地味で物静かな展開ではありますが、見る者に訴えかけてくるものがあり、見応えのあるドラマでした。ドラマ未視聴でも本作は理解できますが、新米保護司として戸惑う阿川佳代、本作でも登場する斉藤みどりとの出会いと交流、コンビニ店長との関係性など、本作につながる部分も少なからず描かれているので、できれば先に視聴しておくといいと思います。

その劇場版となる本作では、保護観察中の受刑者が突然姿をくらまし、事件の容疑者として警察に追われる身となったことで、担当保護司・阿川佳代は苦悩します。また、捜査の進展とともに、テレビドラマ版では軽く触れられていただけの佳代の過去や保護司を志した理由もしだいに明らかになります。そのおかげで物語の奥行きが増し、劇場版らしい濃厚な仕上がりとなっています。前科者に真摯に向き合い、彼らの更生を願って奔走する阿川佳代の姿に、本当に胸を打たれます。

主演は有村架純さんで、渾身の演技が光ります。彼女の人柄が滲み出るような自然な演技と優しい眼差しが、観る者の共感と涙を誘います。この役は彼女にぴったりなハマり役なので、このシリーズをぜひ連ドラ化してほしいと思います。工藤誠役の森田剛さんは、芸能人オーラを封印した演技がすばらしかったです。やむにやまれず犯罪に巻き込まれていく様子が実に切なかったです。その弟・実を演じた若葉竜也さんも、知らない俳優さんでしたが、森田剛さんとの絆を感じさせる好演でした。脇を固める磯村勇斗くん、マキタスポーツさん、石橋静河さん、リリー・フランキーさん、木村多江さんら、どこをとっても隙がかなく、作品の完成度を高めていたと思います。

今回は、上映後に舞台挨拶ライブビューイングがあり、出演俳優陣のお話を聞くことができました。重苦しい内容の作品だけに、現場は常に緊張感に包まれていたようです。阿川佳代同様に、キャストもスタッフも一丸となって作品作りに真摯に向き合ったのではないかと思われます。中でも、有村架純さんの「人を救う、人に寄り添う、人を許す、ということを考え、自分と向き合ってくれる人が増えたら幸せです」という言葉が印象的でした。感じ方や捉え方は人それぞれですが、必ずこの作品から何かを感じ取れるのではないかと思います。自分も、人に寄り添うことが基本の仕事に就いているので、今一度気を引き締め直して仕事に向き合いたいと思いました。

おじゃる
kazzさんのコメント
2022年2月7日

私もWOWOWドラマを観ていたので、牛丼屋に寄ってから映画館に行きました。
そしたら、森田剛が牛丼屋のシーンで登場したので笑っちゃいました。

保護司だけでなく、民生委員なんかも無報酬ですよね。
頭が下がります。

kazz