「魅力的な家事スキルの専門学校」〈主婦〉の学校 デブリさんの映画レビュー(感想・評価)
魅力的な家事スキルの専門学校
料理にテーブルメイク、裁縫、編み物、掃除、洗濯、マナーなどを教えてくれる家政学校の話。どれも、ちゃんと出来たら暮らしが明るくなって人生も楽しくなるものたち。実用的な家事のテクニックを習得することで、使い古された言い方になるけど“丁寧に暮らす”価値観などが醸成されていくようで、その順番がいいなと思った。理屈を理屈のまま押し付けるのじゃなく、手が先に覚えて、頭に入ってくる感じが。
映画は、学校の風景や在校生、卒業生、先生たちのインタビューで構成されているけど、インタビューもそう重い内容は含んでおらず、わりとたわいなくて、でもそれがよかった。
野生のブルーベリーを摘みに出かけたり、マットを布団たたきのようなものでバシバシやったりしているシーンに、全然それっぽくない音楽がかかるのが面白い。
生徒たちはほとんどが女性で、若い人が多い。何も競わず争わず、協力して作業に当たっている。だいたいは熱心に何かしていたり、時にはかったるそうに何かしていたり、誰かの失敗を笑い飛ばしたり、とても普通。ほのかな友情が流れている様子で、楽しそう。
家事の話はジェンダーの話に結びつきやすいので、そういう話も出てくるかなと思ったけど、そこはごくソフトタッチで。ただ、“良き妻”になるために学校に通ってくる生徒っていうのが実は少ないことは明示されていた。
男性の生徒が初めて入学したとき、先生が生徒たちを呼ぶのに、最初は「いいわね、ガールズ、あ、キッズ」と言い直していたけど、そのうち男性も含めて「ガールズ」で通してしまったという話を、当の男性が愉快そうに話していた。おおらか。その男性は「女性たちの仲間に入れてうれしかった」と言っていた。心に残る。
不景気になると入校の申し込みが増えるそうだ。2008~2010年頃がピークだったって。今また多いんだろうか。