「物語の区切りとして、理想的な一作」ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5物語の区切りとして、理想的な一作

2023年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

独特の世界観が多くのファンを惹きつけたものの、ジェームズ・ガン監督の一時解雇など、いっときはシリーズの継続すら危ぶまれる状況に追い込まれていましたが、本作で無事、(一応の)区切りを迎えることができました。

既存のスーパーヒーロー像を打ち壊す破天荒さを備えつつ、キャラクターそれぞれが苦難に満ちた出自を掘り下げていく、という二つの要素が寄り合わさった作品でしたが、これまでの紆余曲折は、本作の結末に間違いなく深みを与えていました。三作を経てすっかり顔なじみになったキャラクターに、派手な見せ場を与える、ではなく、なんらかの救いや希望を与えていくガン監督の愛情に満ちた眼差しは、たとえ前作からかなり時間が経って物語の細部を忘れていても(あるいは本作がシリーズ初見であっても)、観客に十分伝わるだけの力を持っています。その丁寧な「幕引き」の仕方は、物語の一つの区切りを示してみせる、という点で理想的とも言えるものとなっています。

本作の実質的な主人公となるロケットの、彼がどうしてあれほど冷笑的かつやや自暴自棄とも言えるような態度をとり続けるのか、その背景が明らかになった時、そしてそこになんらかの折り合いを付ける時が訪れた時の彼の表情は、忘れがたいものがあります。

映画の語り手としてのガン監督の才能が結集したかのような作品ですが、一方で彼の持ち味である露悪的なまでのブラックコメディ的な要素も冴え渡っているので(『ザ・スーサイド・スクワッド 〜”極”悪党、集結』[2021]である程度予想できたものの)、中盤のとある場面など、「それは倫理的にどうなの?」と思わなくもない箇所がいくつかあるので、そういった点に疑問を抱いてしまうと、ちょっと作品の見え方が変わるかも。

yui