「マルチバース設定がもったいない」ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
マルチバース設定がもったいない
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決してつまらないわけではない。ホラーの演出も面白かったし、ストーリーもドクター・ストレンジらしくて良かった。
でも、「マルチバース」という禁断の果実に手を出してしまったわりには、その設定を活かしきれた話にはなっていなかったと思う。
マルチバースというのは、別の惑星だとか、過去の世界だとか、異世界だとか、そういうのとは次元の違う恐ろしさをもったものだ、ということを、スティーブンはもちろん、映画の作り手さえもよく分かっていないんではないか、という点が不満。
何が一番恐ろしいかって、それはマルチバースでは主人公は主人公としての特権を失ってしまう、ということ。この作品においては、アメリカ・チャベス(マルチバースを移動できる存在であり、全マルチバースを通して唯一の存在)と行動を共にすることによって、主人公は彼女と同じく全マルチバースで唯一の存在となり、主人公の資格を得ている。しかし、アメリカがべつのスティーブンと一緒だったら、そのスティーブンの方が主人公になっていたわけだ。
無数のスティーブンの中で、なぜ本作のスティーブンが主人公足りえたのか…。別の言い方をすれば、アメリカが本作のスティーブンを選んだ理由をストーリーの中であかさなければならなかったと思う。
もしくは、映画の終盤のどんでん返しとして、それまで主人公だと思っていたスティーブンが実は別宇宙のスティーブンだった、というような展開もできたのでは?と思う。
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