「お帰りサムライミ」ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 侍味さんの映画レビュー(感想・評価)
お帰りサムライミ
冒頭からマルチバースの複雑怪奇な話にぶち込まれ、そこからあれよあれよと進む冒険譚。
アベンジャーズ参戦後のストレンジのポジションの「冒険のガイドであるストレンジ」の役割がより深く描かれて、登場するヒーロー達がそれぞれの未来へと進む。
直前にワンダビジョンを履修した僕にとっては、これはワンダビジョン2.0とも言える話。
アフターマルチバースのマーベル作品はもはや何でもありで、ついていけないと置いてきぼりを喰らってしまう。
あの世界でのあのメンバーでのアベンジャーズ。
よく観ればどこかで観た俳優ばかり。
ファンタスティックフォーなのに1人しかいないクワイエットプレイスのパパは今回はよく喋り、エンドゲームで幸せになったはずのペギーは盾を構え、007の役を奪った彼女はキャプテンマーベルの座を奪う。地味なおじさんは地味のまま消え去って、X-Menのチャールズも本人以外いないXーMANとして登場。
地味にウルトロンも健在だったものの、何かが違う世界。
行く世界行く世界が何かが違う状況でワンダのストーリーもそっと幕が降りる。
ゾンビになりながらも、ヒーローの人生に未来を見出すストレンジはさながら深夜食堂のマスターなのかも知れない。
「僕は幸せ」
と言いつつも彼は幸せになる日はもっと後なのだろう。
ワンダはヴィジョンに会えたのだろうか…
P.s. 仕事で心が荒んで発狂したくなった僕は雨の道を佐世保に向けて走った。
最後に来てから数年経っている。
記憶の断片も行方不明なものの、どこか沖縄のようで、どこか横須賀のような町。
一軒だけある地場のシネコンの受付で1200円を払い、レイトショーでこの映画を観た。
自分以外誰も居ない、時が止まったかのような映画館で観るお久しぶりのサムライミは、相変わらずのブルースキャンベルとダニーエルフマンの黄金トリオでその手腕が輝いていた。
監督降板からの奇跡の脚本のマルチバースで着地した映画は、帰りの佐世保の町をキラキラと輝かせていた。
P.s. これから朝まで仕事です(結局仕事のマルチバースから逃げれなかったdeath!
エイジオブウルトロンから始まった彼女の物語がまたウルトロンを倒して終わる事に浪漫を感じる。
今作はそういう過去の出来事を丁寧に拾い、そっと棚に戻す。
そんな話。
結ばれなかったストレンジの恋は、ローマの休日の様に目には見えない確かな愛がそこにはあった。
【補完】
ドクターストレンジと言いつつも今作の主人公はワンダであり、ストレンジとアメリカはヴィジョンという最愛の存在を失い、その愛の象徴であった息子達の幻影に囚われて暴走してしまったワンダに対しての終着点へ導くガイド。
最後の最後で、自分自身に許しを受けて、全てを悟り無へと還る。