「ダークでマッドなサム・ライミ映画!」ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
ダークでマッドなサム・ライミ映画!
まず、予告では世界の崩壊を止めるストレンジの前に別世界の闇堕ちストレンジが立ちはだかる…という話に思えるが、ウソだ。エターナル以降、MCUの予告は基本ウソだと書いているが、今後はもう予告を一切信じてはならないだろう…とは言わない。
なぜなら、本作の敵はワンダだからだ。なるほど、それなら予告で大々的には言えない。(あの予告からでも大体わかるけど)
マルチバースを行き来する能力を持った女の子。その能力で幸せな家庭を手にしたいワンダが悪となって付け狙う。
ヒーロー同士が激突する点ではシビルウォーを彷彿とさせるが、全く異質な空気を感じた。その理由に、まず激突の理由がエゴであることを挙げたい。自分の幸せを手に入れたいワンダと、自分で何とかしたい(作中では『メスを握る』と言われている)ストレンジ。曲がりなりにも正義のあり方で袂を分かったシビルウォーとは対照的と言っていい。
そして何より、サム・ライミの描くホラーが異質な空気の最大の原因だろう。赤黒い波動を操り、傷つき、ヒーローの返り値を浴びながらストレンジ達に迫る姿はまさにモンスター。闇の力に手を出したストレンジも死霊のはらわたやスペルに出てきそうな見た目の怪物となる。眼福だった。エンドゲームよりもスペルを観ておいたほうが予習になるのでは!?
と、ヒーロー同士の激突にホラーも混ざり、満足ではあるのだが、不満点もある。
大きなものでは、ストレンジの映画でもありながらワンダの映画でもある点だ。ワンダが敵となるため必然そうなるのだが、今後は純粋な単体のヒーロー映画は描かれないのか?と不安を覚えてしまった。
また、ワンダビジョンを前提としている(=Disney+を見ている前提)点も好きではない。見ていなくても何となくはわかるが、見ていたほうが楽しめるのは間違いない。ホワットイフも見ているとより一層楽しめるのも癪だ。
あとは前作の要素が尽くショボくなった点か。モルドーの反抗理由が「ストレンジが嫌い」になり、ドルマムゥはマルチバースに比べたらなんともなさそうだったり、結局闇の力に手を出したり。前作超えの脅威と闘わないと面白くないのはわかるのだが…
この作品自体は非常に面白いし、別に上記不満点があっても損なわれるわけではない。ただ、今後のマーベル映画が必ずパック売りされることがただただ不安視される。マルチバースの本領発揮ととるか、全く別の考えを持つか。前者に期待したいところだ。