「関連作品を見ていないと英語力しだいで詰まる…。」ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5関連作品を見ていないと英語力しだいで詰まる…。

2022年5月4日
PCから投稿

今年126本目(合計400本目/今月(2022年5月度)3本目)。

なぜか変則日程の水曜日公開のこちらの作品。
映画館によく行くようになってから数本は関連作品を見ているはずですが、このシリーズ、恐ろしいほど数が多いらしく(実家情報)、それこそ映画館に10年20年単位でいっていないと全部は追えないのではないかということでした。

ということで、私の知識は「数本は見たことがあるが、系統だって見たことはない」程度です。

このレベルの場合、どんどん固有名詞が飛んできます。固有名詞もシリーズものということもあって知っていれば追えるのかもしれませんが、知らないと事実上「●●●が▲▲▲にいって×××」したのような記号化された状況の字幕になり、そこを埋めるには結局英語力勝負(日本語字幕版でもカタカナのままで字幕が出るので、カタカナ字幕から英単語のスペルを推測し、さらに意味を推測する必要が生じる)になるというところです。

あいもかわらず「過去作品を見ていないとわかりにくい」のは確かですが、一方で登場人物はそれほど多くはないので(少なくとも、作内でキーパーソンとして出る人物は6~7人?)、そこで混乱させる要素はないし、最低限の「自己紹介」はあるので、まずそこから「初心者お断り」という状況にはなっていないのが救いです。後半になるともう少し登場人物や過去作品前提の知識が出てきますが、そこまで来るとただ単にバトルシーンなので、どうであろうがあまり関係がないかな…というところです。

また、今日時点(5月4日)では一応コロナ事情は宣言等はない扱い(まん延防止も含む)ですが、例のごとく「最後までお楽しみがあるので見て下さい」で、これも2つあるので結構長いです。まぁ、大阪市も減少傾向にはあるのですが、コロナ事情とてどこの国でも同じで、2020年ならまだしも2022年というわかりきっている今日の作品において、わざわざ「混ませるかなぁ」という部分は明確にあります。ただこれはコロナ事情ということを考えても公式の商法という論点もあるので、一概にどうこうは言い難いです。

なお、他の方が言及されていますが、いくつかグロい部分があります(モンスターの表現など)。苦手な方は飲食物のうち「食べるほう」は控えたほうが良いかもです。

採点にあたっては下記を考慮しています(関係する知識は下記に入れてます)。
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 (減点0.2) やはり関連作品を見ているのが前提で、そうでないと「●●が××して…」という固有名詞というか「空白部分の意味は何でしょう?」のクイズ大会と化す部分があり、しかもそれらの大半は実質ただ単に「英語の知識で埋められる範囲」で、換言すれば「英語力がある人だけがわかってしまう」という部分になっています(高校英語では太刀打ちできない)。もっとも、世界一斉公開のようなので日本(の英語教育事情)に配慮できなかった(できない)部分があるのは仕方がないですが、「ここは日本」です。

 (減点0.1) 予告編や本編で、妙にマニアックな表現をするところがあります(下記参照)。この部分も知識がないとハマる一方で「なんでそんな変な表現をするんだろう??」という「知識がある人も混乱させる」ところがあります。
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 ■ 持っていると良いかもしれない知識

  「サンクタム」 → sanctum(単数形/複数形 sancta)。これではわかりづらいですが「聖域」の意味。「サンクチュアリ」(sanctuary)「聖域」と同語源です。

  「インカージョン」 → incursion(待ち伏せ・襲撃)。incur(動詞/(被害などを)招く、受ける)の名詞形。これも補足ないんですよね…。

  「毎日、同じ夢を見る」 → Everynight, I dream the same dream (予告編。これに代表される、dream のこうした用法) … 字幕だけを追っていると別に違和感はないですが、「21世紀のアクション映画に突如シェークスピアのような英語表現が登場する」というようなものです。

 動詞dream「夢を見る」は自動詞です。したがって目的語を取りません。しかし「夢を見る」という意味ですから「夢」に限って目的語を取り、一時的に他動詞化することがあります(このような「関連のある目的語」を同族目的語、といいます)。動詞 dream 「夢を見る」も「良い夢」「悪い夢」「怖い夢」のようなものだけ目的語をとって一時的に他動詞化する現象があります。ただ、この用法は「非常に」文語的な言い方です(日本語でいえば、21世紀の文書に突如、室町時代か何かの表現が出てくるようなレベル)。ここも「夢を見る」 dream が「同じ夢」 same dream という「関連性の深い目的語」を取って同族目的語を取っている(他動詞化している)ケースです。

  ※ 「夢を見る」という場合、 have を用いて(seeやwatchは使えません) have the dream というのが、およそ普通の英語の用法です。

yukispica