「作品と言うより事象として」キャメラを止めるな! Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
作品と言うより事象として
「アカデミー賞監督が! まさかのリメイク」のキャッチに惹かれて観賞。しかし観終わった直後の不思議な感覚。
とみに記憶力の落ちた昨今、念のために2017年の「カメラを止めるな!」のあらすじを調べてみると、細部までは分からないけれど、起承転結がほぼほぼ同じ。
◉リメイクとオリジナル
小説・コミクス・テレビアニメを映画化するのではなくて、映画と映画の関係。しかも、例えば半世紀以上前の作品を、令和に新たに制作した訳でもない。「リメイク」に対するモヤモヤは消えない。今回の作品をいきなり観たとしたらどう思ったかは、正直、そうなってみなければ分かりません。
この場合は監督によって、どこがどう作り変えられたとか、認識し直されたとか言うよりは、こんな映画が2022年の夏に封切られたと思うのが、良いのかも知れません。
ただ私は「カメラを止めるな!」にはとても感激していました。しかし当時は、まだレビューを投稿していなかった。故に、今ここでオリジナル作品へのレビューを書いてしまおうと思います。
◉「現場合わせ」こそ
カメ止めの魅力と言うか、愛すべきところは、とにかく「現場合わせ」だと私は感じます。映画制作・編集制作・建築工事・土木工事などに必ず付き物の、調整やケツ合わせの可笑しさ、切なさ、愛しさが素晴らしかった。アタフタやアセアセが人間臭くて笑うのだけど、馬鹿にした気持ちなど一かけらもなくて、共感しかない。あの人間ピラミッドからコケるスタッフのおばさんが、今でも目に焼き付いています。
更に廃屋には、裏切りのゾンビストーリーがしっかり仕込まれていた。これも筋書きの一部だよねと思いつつ、彼女が彼氏の首を斧ですっ飛ばしたあたりでは、きれいに騙されていました。彼女の腕や首筋に付いた乾いた血を見て、コメディーに見せかけて実に陰惨な映画を観てしまったと、思っていたのです。
一見駄目父な濱津隆之さんが、娘を想いつつ、一念を貫くのも熱かったです。
オリジナルが凄すぎて、リメイクしようと揉んでいるうちに、呑み込まれてしまったと言う解釈でいいのでしょうか。評価は難しいですが、取りあえず、満点評価のオリジナルの半分としておきます。
そう言えば、この日は2本観賞で2本目が「キングダムII」。濱津さんは信たちを率いる分隊の隊長で、情けない顔つきながら、必死で合戦していました。