劇場公開日 2021年10月15日

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「一番言いたいことが言えないって、好きってことじゃないの?大切だから言えないんじゃないの?」かそけきサンカヨウ 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0一番言いたいことが言えないって、好きってことじゃないの?大切だから言えないんじゃないの?

2021年11月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

こういうのって、やはり今泉監督だなあって思いながら観ていた。
か弱さ。はかなさ。いじらしさ。思いやり。気遣い、、、、。人として、およそ"優しさ"と形容される感情が、いっぱいつまっている。それはこの中に出てくる誰にも。たまに人間関係が煮詰まってしまうけど、それは優しさと優しさが喧嘩してしまう時だから。だから、胸がぎゅっと締め付けられる。そっと抱きしめたくなる。柔らかく背中をとんとんしてあげたくなる。
その中心に陽がいる。時に弱々しい困り顔で、時に強い意志を持った硬い顔で、時にあどけなく、時に大人びて。透明ではかないサンカヨウ、その姿そのものじゃないか。その陽を演じた志田彩良の存在感の確かさ。この子の前に立ったら、身を律せねばと思わせるくらいの屈強なる純真さ。そのくせ、まだ成熟しきれていない脆さをもチラリとのぞかせる演技巧者。今後、期待大。
なお、「かそけき」とは、幽けき(または、幽き)。今にも消えてしまいそうなほど、薄い、淡い、あるいは仄かな様子を表す語、と辞書にある。
「かそけきサンカヨウ」かあ。はじめただの記号にしか見えなかったタイトルが、抜群にお似合いのタイトルであったことに気づかされた今、暖かい気持ちになっている。

栗太郎