サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のレビュー・感想・評価
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レディース & ジェントルメン!次は…
スティーヴィー・ワンダーのドラム演奏から始まる本作 --- こんなに凄い出来事が50年も日の目を見ずに埋もれていたなんて。
69年、ウッドストックから100マイル。ブルース、ゴスペル、ジャズ、ここには様々な音楽があり、そのどれもに確かな"魂"ソウルが宿っている。悲しみ、信仰、痛みやトラウマ、黒人の歴史・歩みがあらゆる感情と共に鳴っては、物語り共鳴する。体が思わず動き出すように自然と心揺さぶられる。ステイプル・シンガーズ、マヘリア・ジャクソン、心に残るパフォーマンスの数々。知ってるアーティストも知らないグループも、どのミュージシャンたちも誠心誠意全力のパフォーマンスで5万人の観客と結びつく。そこに上下はない。あるのは確かな共感と盛り上がり、そして社会的意義。ニグロじゃなくてブラック。
日々生きるので精一杯なハーレムの黒人に、月に行ったことなんて関係ない。昨今のBLACK LIVES MATTERにも共通する危機感と変革の意志、声を上げる告発。もっと高く!スライ&ザ・ファミリー・ストーンやっぱり格好良すぎ。タイトル通り、一夏のあいだ何週にもわたって週末行われたこのイベント、何より無料というのもスゴい。まさしく市民のため。もしも今タイムトラベルできるならハーレム・カルチュラル・フェスティバル見に行きたい。
期待以上のものは─それでもなお─
この手のドキュメンタリーは、音楽を説明でつぶしてじっくりと聴かせてくれないことが往々にしてある。この映画もやはりその範疇だった。発掘映像に近いから、もっと音楽をじっくり…と思ったけれど、当時の時代背景とか人々の思い、あるいは楽曲の説明など丁寧にしかも巧みに組み込まれていて、非常に為になったし、自然と音楽への興味も高めてくれたように思えたので、想像以上に感動した。
もっとハービー・マンとかもじっくりと聴きたかったし、ニーナ・シモンもフルで聴きたいと思ったけれど、ニーナの説明とか個人的な話など巧妙に絡み合っていて、結構感動したからなー。
ウッドストックの映像ものに比べると、どうしても映像も音質も劣っている印象は受けるが、熱量や感動といった面では遥かに上をいっていたような…
良かった、良かっただけにさらに欲深き気持ちになってしまいました。帰宅後、ハイレゾなんぞを貪ること必至。
なんと言ってもマヘリア・ジャクソン
「黒人音楽」と称されるものの、多種多様さを見せつける作品だった。
ジャズはないが、いわゆるソウルだけでなく、ゴスペル系、そして、ラテンポップとの融合系音楽に至るまで。
「サイケデリックR&B」なんて言葉は、初めて聞いた。
B.B.キングは出るものの、ブルース系が少ないという印象はあるのだが。
この時代は、ジャンルがほぼ出そろった“黄金期”だったと言えるのかもしれない。(間違っているかもしれないが。)
ライブなのがいい。
彼ら・彼女らの“剥き出し”の個性が、映像として明らかになる。
最後の方に出るニーナ・シモンは初めて映像を観たが、“闘う”スゴいシンガーだ。音楽だけを聴くより、彼女の本質を知ることができるかもしれない。
本作の作り方には、賛否両論あると思う。
一つの一つグループの演奏をじっくりと見せることなく、ナレーションが入ってくる。
自分としては、馴染みのあるグループがほとんどなかったので、単にダラダラ映像を流されるよりも、「解説付きライブ」という感じで楽しめた。
しかし、詳しい人には、“ブツ切り”にされて不満だろう。
とはいえ、ベトナム戦争や、「ケネディが、マルコムXが、キング牧師が奪われた」とか、「月面着陸しているカネがあるなら、貧困対策しろ!」とか、そういう話はこの時代には無視して通り過ぎることはできないだろう。
さかんに69年は「革新」と語られるが、よく聞くと「Revolution」だけでなく、「Progress」でもある。「自由への要求」の大きなうねりが、会場全体で音楽ともに躍動している。
アフロヘアの流行や、アフリカン・スタイルのファッション(ダシキ dashiki)にも触れられる。
そういう社会背景も、音楽映像とシームレスにつないでくれたので、自分は見やすかった。
自分としては、なんと言ってもマヘリア・ジャクソンだった。
ここまで生々しいマヘリアを観たのは初めてだ。
このライブの2年半後に亡くなる57歳のオバサンだが、それでもメイヴィス・ステイプルズの助けを借りて、“シャウト”している。
自分はもう、感涙であった。
これは熱かった。全身火傷した。
50年間封印された黒人による黒人のための音楽フェス:ハーレム・カルチュラル・フェスティバル。
あのウッドストックと同じ1969年の夏、たった160キロしか離れていないNYはハーレムの奇跡。
これは21世紀最大の発掘の一つとして讃えられるべき驚愕のモニュメントだった。凄まじい音楽が在った。
何とスティービー・ワンダーのドラムからスタート。作り手の音楽愛をしっかりと感じることができるオープニングだ。
B.B.キングからチェンバーズ・ブラザーズへ熱いバトンをつなぎ、フィフス・ディメンション登場‼︎
当時を振り返るファンの「マリリン・マックーが初恋だった」という言葉に涙し、自分たちの映像を見ながら涙するマリリンを見て涙腺が崩壊した。
休む間もなくステイプル・シンガーズ。30歳のメイヴィス・ステイプルズは無敵だった。今作のクライマックスとなるマヘリア・ジャクソンとの歴史的な共演を含め、メイヴィスがMVPと言って良いかも。
そしてこの時代に人種混合、男女混合のバンドが在った。そう、この2021年に改めてスライ&ザ・ファミリー・ストーンの存在の意味、意義を知ることとなった。ブラックではないグレッグ・エリコのグルーブが会場の黒人たちを圧倒した。
それにしてもニーナ・シモンの神がかったカリスマ性はいったい?
とか、語りだしたらきりがない。あの時代の政治・文化・ファッションをきっちりと反映したドキュメンタリーとしても貴重過ぎる。
すべてがハイライトと言える傑作であり必見作だ。
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