「なんと言ってもマヘリア・ジャクソン」サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時) Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0なんと言ってもマヘリア・ジャクソン

2021年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「黒人音楽」と称されるものの、多種多様さを見せつける作品だった。
ジャズはないが、いわゆるソウルだけでなく、ゴスペル系、そして、ラテンポップとの融合系音楽に至るまで。
「サイケデリックR&B」なんて言葉は、初めて聞いた。
B.B.キングは出るものの、ブルース系が少ないという印象はあるのだが。

この時代は、ジャンルがほぼ出そろった“黄金期”だったと言えるのかもしれない。(間違っているかもしれないが。)

ライブなのがいい。
彼ら・彼女らの“剥き出し”の個性が、映像として明らかになる。
最後の方に出るニーナ・シモンは初めて映像を観たが、“闘う”スゴいシンガーだ。音楽だけを聴くより、彼女の本質を知ることができるかもしれない。

本作の作り方には、賛否両論あると思う。
一つの一つグループの演奏をじっくりと見せることなく、ナレーションが入ってくる。
自分としては、馴染みのあるグループがほとんどなかったので、単にダラダラ映像を流されるよりも、「解説付きライブ」という感じで楽しめた。
しかし、詳しい人には、“ブツ切り”にされて不満だろう。

とはいえ、ベトナム戦争や、「ケネディが、マルコムXが、キング牧師が奪われた」とか、「月面着陸しているカネがあるなら、貧困対策しろ!」とか、そういう話はこの時代には無視して通り過ぎることはできないだろう。
さかんに69年は「革新」と語られるが、よく聞くと「Revolution」だけでなく、「Progress」でもある。「自由への要求」の大きなうねりが、会場全体で音楽ともに躍動している。
アフロヘアの流行や、アフリカン・スタイルのファッション(ダシキ dashiki)にも触れられる。
そういう社会背景も、音楽映像とシームレスにつないでくれたので、自分は見やすかった。

自分としては、なんと言ってもマヘリア・ジャクソンだった。
ここまで生々しいマヘリアを観たのは初めてだ。
このライブの2年半後に亡くなる57歳のオバサンだが、それでもメイヴィス・ステイプルズの助けを借りて、“シャウト”している。
自分はもう、感涙であった。

Imperator