劇場公開日 2021年9月23日

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「今この作品を世に問うた意味」MINAMATA ミナマタ 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5今この作品を世に問うた意味

2021年10月18日
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鑑賞方法:映画館

ユージン・スミスが水俣を取材した写真群のことは知っていたが、その機会を作ったアイリーンという女性(当時の妻)の存在は知らなかった。
映画では、二人の出合いと水俣に向かうきっかけは、あっさりとしか描かれていないが、実際はそこだけでも相当ドラマチックな気がする。
事実に基づくとは言え、創作部分は相当あるようだ。チッソの病院を関係者のように変装して探索するところ、特に、研究室で動物実験の結果を見つけるあたりは、ちょっとやり過ぎな感じも。しかし、ユージンがチッソの社員から暴行を受けたのは、場所は別だが、本当にあったことだそうだ。当時のチッソは株主総会の警備に暴力団も使っていたそうで、時代が時代とはいえ、おそろしい。
映画としては、ところどころ繋がりが悪いところもあるが、ユージンがチッソの妨害工作に挫けそうになりながらも、患者の家族の理解を得て、プライベートな姿を写すことになり、最も著名な入浴する母娘を撮った写真がクライマックス。ユージンから送られた写真を見たライフの編集長が「やりやがった」と呟くシーンにぐっときた。
ジョニー・デップは自らの姿を消して、ユージンになりきっていた。日本人俳優陣では、チッソの社長役の國村隼が出色。
ラスト、いまだに水俣病の患者認定や補償が決着していないこと、そして、タイトルバックで紹介される水俣以降も世界で続く公害・薬害・環境破壊の写真を見て、ジョニー・デップをはじめ製作者たちが、今この作品を世に問うた意味が分かった気がする。

山の手ロック