「塵も積もれば山となるですよ?」MINAMATA ミナマタ サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
塵も積もれば山となるですよ?
水俣病についての映画制作をジョニーデップが提案し、自ら主演と制作を務めた本作。一歩間違えたら批判殺到になりかねないテーマなので、期待はそこまでせず。
すごい映画だ...。
忠実に丁寧に分かりやすく、後世に伝わる歴史映画。目を離すことが出来ず、2時間驚くほど集中していた。
1971年ニューヨーク。かつてはアメリカを代表する写真家と言われていたユージン・スミスは、酒に溺れる毎日を過ごしていた。そんなある日、日本人女性のアイリーンから熊本県水俣市にあるチッソ工場が海に有害物質を流しており、それにより苦しんでいる人々を撮影して欲しいと言われる。
ジョニーデップだから出来た映画だと思う。
酒に溺れ子供の写真なんて撮ったことがない男がミナマタを通して、自分のあるべき姿に気づき成長し変わっていく。ユージン・スミスという男を丁寧に繊細に演じ、ラスト20分辺りは最初と対比しながら感動した。水俣病をテーマに映画を作ってくれてありがとう。
非常に分かりやすく見やすい映画。
ストーリー構成も脚本も、詰め込みすぎず緩すぎない。このような伝記映画だと、内容を少しでも多く伝えようとして見にくいと感じることが多いのだが、本作は所々でクスリと笑えるところもあるため、見やすく内容が頭に入りやすい。
映像もまた素晴らしい。
カメラワークが写真家を主人公にしただけにとても良く、目の前が1971年になる。ユージンが写真を撮影するシーン、現像するシーン、飛び込むシーン、暴行を受けるシーン、どれも斬新なカメラワークで見るものに現実を叩きつける。
映像よりも深く訴えかける写真。色があるよりも白黒の方が想像が広がり、恐ろしさが伝わる。たった1枚が重くのしかかる。ユージン・スミスに敬意を示したい。思い出すだけでも泣けてしまう写真。自分にとってすごく意味のある2時間だった。ありがとう。
しかし、すっ飛ばしている部分がいくつか。
それで終わりなの?とか深追いはしないの?とかそこ描かないんだ?とか、気になる点が多く見られた。最初のカメラマンとかもどこいったんだと思ったし。
人物関係性がイマイチ。
アイリーンとユージンは上下関係でもあるの?というくらい、ユージンは彼女に頭が上がらない様子だし、浅野忠信や加瀬亮の扱いも雑。水俣病については文句無しなのだが、ユージン・スミスについてはもうちょっと丁寧に描くべきだったのではと思った。
でも、とてもいい映画でした。
劇場には小学校高学年の男の子がおじいちゃんと一緒に見ていた。この子はどんなことを思ったのだろうかと考えながら、孫を連れてきたおじいちゃん素晴らしいなと感じた。