「まあまあの映画」MINAMATA ミナマタ stoneageさんの映画レビュー(感想・評価)
まあまあの映画
今の時代、エコは当たり前だけど、この映画に描かれている1970年代なんて、日本の空はもっと霞がかって、川や海なんてもっと汚かった。新作ゴジラのライバル怪獣は、"ヘドラ"なんて名前だし…。学校では、お昼頃になると"光化学スモッグ警報"なんてのがちょくちょく発令され、"みんな大好き"体育の授業は中止になり休憩時間も校庭には出れず、大ブーイング…(まぁ、僕はその方が良かったけど笑)。
そんな時代、水俣病やイタイイタイ病、サリドマイドの薬剤被害とかの記録映画なんかを授業中に見せられる…もちろん広島や長崎の映像も…。
子どもながら、そのショッキングな映像の連続に胸を痛めたし恐怖した…「こんな事が起こるのだ」と。そして「この世には"悪い"大人がいるのだ」ということも改めて知る。
で、この作品…。
ユージン・スミスの名前は知らなかったけど、あの"母親が娘を抱っこして入浴させる"写真は知っている。
"5時間かけて娘に食事をさせている"というエピソードがちらっと語られたけど、全身の筋緊張が強く、頭が後ろへ伸びきった状態では、むせて仕方がなかっただろう…舌や口の動きも良いようには思えないし…。
そんな家族や患者自身の苦悩が今ひとつ描き切れていなかったように思えた…映像から伝わってきたのは、単にアジテーションの激しさ…声を荒げた訴えをいくらしても、柄が悪いだけにしか映らなかった。
あと、主人公を演じるジョニー・デップは熱演だったけど、なんか酒を口にするシーンばっかりで、カメラマン以上に"酔っ払い"という印象。
あの入浴シーンを撮影する事になった場面も、最初は撮影に対して拒否的であった"アキコの家族"が、ユージンに撮影を許可する心理的な変化とかをもっと丁寧に描いて欲しかった。
作品のテーマは良いのに、なんか残念な仕上がりだなと思った。
*ユージンがアキコの子守りを任され、抱っこしながらボブ・ディランの"Foever Young"を歌う場面はちょっとウルッと来ました(笑)…ディランが自分の子への思いを歌にしたらしい。
*水俣病云々よりも、写真家としてのユージン・スミスという人間に興味がある人の方が、この作品をより楽しめるのではと思いました。