「五人分の想い」映画 五等分の花嫁 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
五人分の想い
アニメなら人気の『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』、今話題の『SPY×FAMILY』を見ればいいのに、こういうのを見てしまう。困った事に。
『ハルヒ』『けいおん!』『ラブライブ!』然り。ヲタと思ったり、ドン引くならどうぞ。可愛い女の子たちが登場するアニメが嫌いじゃないんだから仕方ない。
この劇場版が公開中だからか妙に気になり、試しにNetflixでまず1話見てみたら、1期2期と一気見してしまった。
で、そのままの勢いで劇場版も。しかも地元の映画館では上映してないので、わざわざ隣町の映画館まで出向いて。
やれやれ、困ったミーハーもんである。
でも…、だって、TVシリーズでは判明しなかった風太郎が五つ子姉妹の誰を選び、結婚したのか。あの“花嫁”が遂に明らかになるんだもの。
やっぱり、気になるぅ~!
まず、TVシリーズの概要やキャラを。
高校生の風太郎。学年トップの成績優秀だが、自信家で高慢な性格。友達は(そんな性格故当然ながら一人も)いないが、勉強一筋。ゴーイング・マイ・ウェイ。
ワイルドな父親とお利口さんで可愛い妹との3人暮らし。ボロ・安・狭のアパート住まいの超貧乏。
そんな彼に、高額報酬のバイトの話が。成績悪い同学年の家庭教師を務める。
これが、色んな意味で“始まり”であった…。
相手は、豪華タワマン暮らしのお金持ちの娘“たち”。何と、揃いも揃って美少女の五つ子姉妹であった…!
一花。
長女。小悪魔的な性格だが、長女故面倒見が良い。
姉妹の中では一番モテ、姉妹にも内緒で女優の仕事を始めた。結構ズボラな面も。
だが、バカだ。
二乃。
次女。勝ち気でズケズケ物を言う、キッツイ性格。当初は風太郎に対して最も反発心が強かった。
お洒落や料理上手など、女子力高し。性格に反して実は家族思いで、繊細でもある。
だが、バカだ。
三玖。
三女。内向的な性格で、抑圧のない喋り方、運動音痴で料理下手。髪で顔を隠し、ヘッドフォンを常に首に掛けている。
歴女で、それがきっかけで姉妹の中で最初に風太郎の勉強に向き合い…。
だが、バカだ。
四葉。
四女。元気ハツラツで、最もフレンドリーな性格。風太郎とも最初から分け隔てなく。大きなリボンが特徴。
人からの頼み事を断れず、勉強も姉妹の中で一番下(本人も自称)。それが原因で姉妹に対しある罪悪感を抱いている。
だが、バカだ。
五月。
五女。真面目で誰に対しても敬語で話す。食べるのが好きで、怖いのが苦手。
家庭教師の話の前に風太郎と会っているが、その時の出会いが最悪で、風太郎とはしょっちゅう衝突する。
だが、バカだ。
風太郎は“皆同じ顔”と言うが、髪型も性格も個性もバラバラ。
風太郎の呼び方もそれぞれ。一花「フータローくん」、二乃「上杉」、三玖「フータロー」、四葉「上杉さん」、五月「上杉君」。
幼い頃は判別出来ぬほど、見た目も髪型も服装も一緒。
個性が分かれ始めたのは、成長もだが、最愛の母の死。それぞれの立場や役割に応じて。
尚、その頃の“誰か”と風太郎には、ある関係が…。
今は個性バラバラになったが、一致する事が一つ。
勉強ダメダメ。勉強嫌い。
何かにつけて勉強をサボったり、怠けようとしたりする。
赤点ラインの彼女たちの成績を上げ、無事卒業させる。
雇い主は彼女たちの義父。娘たちとも他人行儀な距離を置く、かなりシビアな性格。もし、出来なければ…。
風太郎にとっては金の為のバイト。
姉妹も勉強したくないし、(五月曰く)あなたの頼りにはなりません!
問題山積み。
…当初は。次第に…。
姉妹たちの成績が少しずつ向上し始める。
まだまだ抵抗はあるが、一人一人、風太郎を受け入れ始める。
風太郎自身も。彼女たちと触れ合う中で、決して勉強の虫だけじゃない人間味を見せ始める。
辛辣ながらも、的確なアドバイス。
勉強も含め、それ以外の“今”や“存在”。
教師と生徒の立場を超え、欠けがえのない“パートナー”になっていく。
中間試験や期末試験、林間学校、花火大会、修学旅行…。
それらの中で、特別な感情に…。
最初に風太郎に好意を抱いたのは、三玖。でも、その性格から胸に秘めたまま。徐々に徐々に変化していく。風太郎を好きになり、表情や口数も増え、性格的に“強く”なっていく。
次に好意に気付いたのは、一花。三玖の想いを知りながらも。一見ピュアで優しいお姉さんだが、自分の気持ちに素直になるあまり、時に行動や手段を厭わない。
意外だったのは、二乃。ずっと風太郎を毛嫌いしていたが、ある事をきっかけに風太郎への想いに気付く。それからは強気な性格故、直球に告白もし、度々大胆アプローチ。恋の暴走機関車は止められない。呼び方もいつしか“上杉”から“フーくん”に。
ミーハーもんの意見で、実質のメインヒロインは五月と感じた。だから、風太郎と五月の関係性はいつも微妙。しょっちゅう喧嘩したり、和解したり、最初の最悪の出会いも含め、深い。この二人に男女の関係や想いが…? …と思ったら…。
恋愛事とは縁遠そうな四葉。風太郎とのやり取りも異性を感じさせないナチュラルさで、あどけなさから妹か子供みたいな感じ。少なからず淡い想いは抱いているようだが、他の姉妹に比べたら不相応。…が、今回の劇場版ではTVシリーズではあまり触れられていなかった四葉の風太郎への実は強い想いがしっかり描かれていて、驚き。おバカで子供じみてても、恋する乙女なのである。
…と言うように、五つ子美少女姉妹から想いを寄せられる、男子にとっては夢のようなハーレム状態なのである。
…いや、お高く止まって言うのはよそう。
羨まし過ぎるぜ、コンチクショー! 一人なんてとてもとても選び切れん!(…とは言いつつ、私の推しは三玖である)
ところがどっこい、この鈍感クン、姉妹の気持ちに気付かず。テメェ、それでも男か!
…しかし、風太郎も全くそういう感情が無いという訳ではない。ずっとずっと想いを寄せている一人がいた。
幼い頃、やんちゃな悪ガキだった風太郎。京都旅行で、一人の少女と出会う。
その時二人で撮った写真を今も大事に持っている。
後に不思議な“再会”をした時、“零奈”と名乗り、風太郎にとっては初恋の相手。
それは彼女にとっても。その時から、今も…。
お察しの通り、この“写真の少女”は五つ子の内の誰かなのである。
TVシリーズ第2期の最後の方で、誰かなのは判明するのだが…、それが意外な人物…!
風太郎も徐々に、“写真の少女”が五つ子の中の誰か思い始めるが、誰かは分からない。
それはつまり、風太郎も五つ子に惹かれ始めているという事。
一人の少年と五人の少女。
言わば、六角関係。
仲良し五つ子姉妹だが、恋のライバルとなると話は別。
一人占めしたい、私だけのもの、姉妹を蹴落としてでも、負けたくない。
火花バチバチ! 視点を変えれば、壮絶な恋の姉妹バトル! 修学旅行の“シスターズ・ウォー”なんて、ある意味ハラハラ…。
つくづく、罪な男だぜ、風太郎。
TVシリーズもこの劇場版も、五つ子の中の“誰か”と結婚式を挙げる風太郎の回想形式。
ここに至るまで、本当に色々あった。
笑い、悲しみ、切なさ、涙、幸せ…。
それだけに風太郎が誰を選んだか、この劇場版が気になって仕方なかった。
さて、誰を選んだか…?
それにおあつらえ向きな、学園生活最大のイベントである学園祭。今回のメイン舞台である。
学級長の風太郎と実行委員の四葉は大忙し。
一花は女優の仕事で不参加だが、二乃は他の女子と学園アイドルの助っ人、三玖はパンケーキの出店に奮闘、五月は学園祭中も勉強に勤しみ…。
それぞれの想いを抱えた学園祭。その中で、風太郎はある決心をする。
最終日までに、誰か一人を選ぶ。
遂に“六角関係恋模様”に決着。
勿論それが一番の見せ場だが、それ以外でも青春や家族のドラマとしても充実。
突然現れた、姉妹の実父。詫びを入れるが、その本性は…。“皆”でぎゃふんと言わせたシーンが痛快。
本作で改めて知った、義父の思い。娘らに関心ナシの冷淡な父親かと思いきや、実は娘たち思い。どんな思いで彼女たちの母親を愛し、姉妹たちを引き取ったか。父親としての愛情感じた。
今も姉妹たちの心に生き続ける母親。五人でいる尊さを説く。
それを受け止めた姉妹もいれば、重荷になった姉妹も…。
一花は女優、三玖は苦手な料理を練習し料理の道へ。五月は教師を目指す。彼女たちの母も教師であった。
それぞれの夢や道へ歩み出す。
二乃は義父に学園祭の招待状を送り、四葉は頑張り過ぎて疲労で倒れてしまう。言わんこっちゃない。
あっという間に学園祭最終日の夜。
姉妹は校内の別々の場所へ。その内の一つに風太郎が訪れ、つまり相手を選んだという事。
そして、風太郎が選んだのは…
TVシリーズの流れを汲むと、三玖。個人的に彼女推しであり、TVシリーズ第2期最終話のシチュエーションや彼女自身の成長ぶりから彼女であって欲しいと思ったが…。
単純に考えたら、五月。でも彼女だったら、やっぱりね…な当たり前過ぎて意外性は無い。
意外性だったら、一花や二乃の線もあったが…。
そう。
四葉。
まさか! 意外! 驚き!
でも、意外は意外でも、一花や二乃を選ぶ“意外性”とは違う。
しっくりもきた。実は言うと…
あの“写真の少女”は、四葉。(これもてっきり五月と思っていたが…)
つまり風太郎は、あの時から抱いていた想いを、色々回り道したが、結果的に初恋の人へ成就させたのだ。
四葉が選ばれた事で、姉妹の反応もそれぞれ。応援する者もいれば、許せない者も(←誰とは言わないが)。
選ばれた四葉自身も。
何故、私…?
私でいいの…?
明るくフレンドリーに見えて、その内は複雑。
今の学校への転校も、私だけが落第したから。そんな私の為に、五つ子はいつも一緒とついてきてくれた姉妹。
幼い頃、五つ子の中で最初に個性が出(スポーツ万能で)、私が姉妹の中で一番。特別。
誰が特別ではなく、姉妹五人でいる事を教えた母。
そんな母の言葉がネックに。
幼い頃はスポーツだけじゃなく勉強でも一番だったが、成長するにつれ、スポーツだけが突出して、勉強の方は…。
私は一番じゃなかったの…?
私は特別じゃなかったの…?
そこに追い打ちをかけるように、転校の負い目。
私は必要されてない。
私の存在って…?
ましてや、上杉さんに恋心を抱くなんて…。
私は皆のサポートの立場でいい…。
でも、四葉のサポートにどれだけ支えられたか。
常に姉妹を応援し、時にアドバイス。
風太郎にとっても、入り口が堅かった姉妹への“鍵”。
彼女の底抜けの元気にどれだけ助けられたか。
作品的にもいつも好サポート。
サポートに徹していた四葉だが、今度は彼女が支えられ、自分の本当の気持ちや幸せを手に入れて、誰が責める?
悩み悩んで、自分の気持ちに気付いた四葉。いつもの元気いっぱいさで。
風太郎への想いをしっかりと認識。
風太郎も四葉の隣に立ち、共に歩む決心をする。
幸せと愛情に溢れた二人。
そんな二人を見守る姉妹。
この上ない幸福感に包まれた。
結婚式。
最後の最後の“五つ子ゲーム”もクリア。
愛があれば見分けられる。
最初はオイオイと思ったこの台詞。でもこんなにも彼女たちと触れ合い、魅了されれば、その言葉に異論ナシ! 私自身も彼女たちそれぞれの顔や個性を(ある程度)見分けられるように。
結婚式終わっても、まだまだ。
次はハネムーン。
水入らずかと思ったら、やはり五つ子!
五つ子面倒臭ェ…。
行き先もバラバラ。
例え個性や歩む道はバラバラであっても、それでいい。
心や姉妹の絆はいつも一緒。
それはもう“五等分”じゃない。
“五人分”の想い。