「最後のアニメ化が映画の場合」映画 五等分の花嫁 スカポンタン・バイクさんの映画レビュー(感想・評価)
最後のアニメ化が映画の場合
これは正直難しいです。
私はこの作品の原作が好きです。といっても、原作を読んだのは、今回の映画を見る直前なのですが。テレビシリーズはリアタイで追いかけていて、今回映画を観るにあたり、悩みに悩んで読みました。まぁ、原作段階でいくらでもツッコミどころというのはあるわけですが、でも最終話まで楽しんで読んだくらいにはこの作品が好きです。(誰推しとかは変にネタバレになりかねないんで言いませんが...)
ここから長くなると思うので、先に結論を言っておくと、作品を楽しむという意味ではまず原作を読むことをオススメします。アニメは、美味しい所だけ「美味しい」って味わう程度にするのが良いかなぁと思います。個人的には第2期は美味しい所が多くて好きです。
◯映画として
まず前提として、近年ではアニメ以上に映画を主に観ている私としては、この作品に限らずテレビシリーズの続編または完結編を映画にするというやり口にはこれまでもこれからも賛同することはできないです。私にとっては、映画はそれ単体として成立しているものであり、90分程度で起承転結が描かれる事の美しさがあると信じています。そこからすると、今までのシリーズを好きな人のために作られた作品というのは評価しづらいです。作品本編そのものの面白さと思い入れ補正を区別する事が難しく、観る人の個人差を生みやすいからです。
これは最近のMCUなんかが、特に難しいコンテンツになってるなぁと思います。私はドクターストレンジ2は好きなんですが、ワンダヴィジョンは観ていません。これだけでも相当変わると思います。
なので、この映画のレビュー点が高くなる事自体はおかしいとは思わないです。元々好きな人が観に来て「好き」ってなる人が多いっていうのは、そりゃあそうだろうという感じです。勿論、人によって意にそぐわないというのはあるかもしれないですが、基本的には「好きになりたい」って人が来るコンテンツですから、よっぽどの事がなければ評価が劇的に悪くなるというのは起こりづらいでしょう。
ただ、この映画はクオリティが高いかといえば、それは別問題です。
◯私が思う原作の魅力
ザックリ言うと、この作品は一男多女なハーレムラブコメ作品です。
私は大体こういう作品を好きであり続けられるというのは中々ないんです。理由としては3つあって、
1つ目は「誰も選ばないことが多い(または、完結しない)」、
2つ目は「選ばれたヒロインが何故選ばれるのかの(あたかも論理的な)理由づけをすることが多い」、
3つ目は「選ばれるべきヒロインはこの子!と言わんばかりに他ヒロインが持ち上げたりする」
というのがあります。
つまりは、この「五等分の花嫁」に関してはこれが最後まで無くて、さらにはマルチエンディング的可能性を最後の決定打まで貫こうとしてくれた事に感動したんですよね。心底「誰が選ばれてくれてもいい」と思えている、つまり5人ともがメインヒロインであり続けてくれたというのが本当に素晴らしいと思いました。それがまぁ、上手くいってない所もあるなぁと思いつつではありますが。w
さらに、これはハーレムラブコメ方向ではなく、五つ子1人1人の自己確立の話にもなっているため、選ばれない事でお役御免にはならず、それぞれが1人のキャラクターとして一人立ちしているという所をちゃんとやっているというのは凄く好きでした。
◯第1期テレビシリーズについて
私の体感としては、このテレビシリーズ以降で人気がすごく出たという印象が強いのですが、正直驚きでした。
何故かというと、第1期は本当に頭が痛くなるほど、五つ子ちゃんたちが可愛くないんです。「俺が好きなのは妹だけど妹じゃない」も私はリアタイで観てた時は愕然としたものですが、「五等分の花嫁」はあそこまでではないにしても少し思い入れがあっただけにかなり辛かったです。『「可愛い」が重要な作品で何してくれてんだ!』ってなりながら、脳内補正をかけて視聴していた事は今でも忘れません。
あと、私はそんなにグッズは買わない人間なんですが、この第1期のデザインのグッズが展開されてた時期はかなり苦しい思いをしました。カードゲームをやるので、その関係でスリーブが欲しかったりするわけですが、この時期のスリーブには本当に惹かれなかったです。
◯第2期テレビシリーズについて
これは凄い楽しかったです。何よりも全体に施された整形手術。第2期第1話に二乃が初登場したときの「そうこれ!」感は凄かったです。とにかく、第1期はデザインもそうですが、彩色がとにかく観てて辛かったので、もう甘々な私はこれだけで100点です。しかし、さらに第1期以上に1話あたりで繰り広げられる5人の群像劇感が強くなって、1話1話の見応えもかなり上がりました。もう、良いところばっかりです。
◯「映画 五等分の花嫁」について
ようやく本題です。w
まず、疑問なのが「この作品は映画向きなのか?」という事です。結論としては、絶対にテレビシリーズでやった方が良かったと思います。これは、前述したマルチエンディング的側面、つまり1人1人のヒロインのエピソードがそれぞれに確立しているためです。映画の学園祭の話というのは、正に原作のまんま各ヒロインごとの文化祭を順番に描くという構成になっています。つまりは、1本の起承転結ではなく、5話分のエピソードを繋げたようになってるということです。そのため、1連の流れとしての起伏は映画として観た時に歪だと思います。これは最近だと「ザ・バットマン」「シン・ウルトラマン」なんかが同じ事になっていますね。さらに、これは映画の上映時間としての限界で、エピソードがややダイジェスト的で全体に忙しないものになってしまっています。とにかく、間とか余韻ってやつがとことん足りてないなと思いました。
次に、アニメーションとしてのクオリティはどうなのか。これも映画で1800円取るほどかと言われると疑問です。「鬼滅の刃と同じ値段か?」と言われると辛い。キャラデザのクオリティは第2期から上りも下がりもしてないというかんじだと思います。ただ、大画面で観ると、テレビでは気にならなかった(またはそこまで観てなかった)画面内のスカスカ具合が気になりました。これは画角とか見せ方の問題でもあると思います。あと、動きでしょうか。これはですね、学園祭初日のオープニング催し、これで100点です。いえい。
最後に、学園祭後夜祭スケジュール終了直後の話。というか、まぁ1人を選ぶエピソードですね。勿論、誰だったとか言う気はないですし、前述した通り誰であっても私は良いと思っています。推しは勿論いますが...。
ただ、ここに関してはある改変をしています。そこだけは、その他の何を忖度したとしても、私は擁護できないと思いました。
この改変にはいくつか問題があって、1つは重要な「1人を選んだ」瞬間の勢いを失速させてしまっていること、そして、前述した「(あたかも論理的な)理由」になってしまっていることです。幸い、その心中を主人公上杉くんは知らずに終わってくれるので、彼の選択動機ではないのですが、観客はそのシーンを観た時、その構成上そういった因果を見出さずにはいられないと思います。それをできるだけ抑えてくれていたのが原作の美点だっただけに、これにはショックでした。
◯まとめ
長々と書きましたが、思い入れのある作品が完結した感慨深さはありました。いつぞやのEP9のように、「早く出たい」とかも思いませんでしたし、それなりに楽しくみました。
これは本編とは関係ないのですが、私は公開日のレイトショーだったのですが、満員御礼でした。劇場内の久々の光景に上映開始前から、少し感動してしまいました。
以上。ではまた。
非常に論理的で分かり易いコメント感謝です。自分は映画のみ初だったので、非常に満足でした。^ ^
四葉の純粋、暴走、失敗、落ち込み、暴走に泣かされました。欠点だらけで不運、やっぱり失敗、それでも頑張る、健気さに泣かされました。( ; ; )
映画だけなので良かったのかも。
原作の方がより良いみたいなので、今度、チャレンジしたいと思います。
非常に共感しました…。
2期の流れからの映画は期待していたのですが、鬼滅の刃無限列車や呪術廻戦0と比べるとどうしても…そこまで何度も観たいとは思えない映画でした。それなのに特典色紙5人ランダムって……^^;
作画に関しては原作が1巻からほとんど画力クオリティが高い人なせいもあるかもしれませんが、映画として物足りない感じでしたね。TVアニメをそのまま流したような感じに見えました。