「DCの時代」ジャスティス・リーグ ザック・スナイダーカット 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
DCの時代
2017年に公開された『ジャスティス・リーグ』。
ヒーローたちが集結し、DCユニバースの総決算になる筈だったが…、興行的にも批評的にもチョイコケの期待外れの結果に。
それまでDCユニバースを引っ張ってきたザック・スナイダーが諸事情で監督を降板したのは誰もが知る所。
実はスナイダーは作品をほとんど完成させながらも、スタジオが難色を示し、新たに雇った(まさかの)ジョス・ウェドンが再撮影やカットを行い、事実上“お蔵入り”に。
その時から囁かれてきた声。
“ザック・スナイダー版が見たい!”
スタジオはその声を一蹴。夢か幻のまま…。
が、ファンやスタッフ/キャストの熱望が、実った…!
JW版も嫌いではない。なので、その後止まらぬジョス・ウェドンの撮影現場でのアンチ意見に対しては複雑な気持ち…。『アベンジャーズ』現場でもそうだったのかなぁ…と、疑ってしまう。
それはさておき、
全編に渡ってスナイダー印!
よりダークに! より重厚に! よりエモーショナルに! よりボリューミーに!
話的には同じ。でも、JW版とは似て非なる。全く別作品として生まれ変わった、言葉通りの“ザック・スナイダーカット”だ!
映画一本分の約7000万ドルの巨費を投じ、追加撮影、再編集。
JW版は2時間。
それに対し、このZSCは驚異の4時間超え!
6つのエピソードで章分けし、エピローグ付きの贅沢さ。
追加された2時間分がやはり見所。ヒーローたちのみならず、ヴィランのドラマまでも深く掘り下げられた。
JW版で初登場したのが、フラッシュ、アクアマン、サイボーグ。フラッシュはいいキャラして印象残り、アクアマンはその後すぐ単体作品が作られたが、不憫だったのがサイボーグ。しかし今回、そのバックボーンがじっくり描かれる。JW版以上に機械の身体になった悲しい経緯、科学者である父とのドラマがたっぷりと。最も共感するヒーローになった。
ヴィランのステッペンウルフ。JW版では突然地球に現れて、マザーボックスを狙うただ配置されたようなヴィランの印象だったが、目的もより克明に。支える黒幕の先兵と、何かの汚名返上の為。また今回、黒幕のもう一人の右腕デサードと、クライマックスには黒幕ダークサイドも登場! 想像を絶する壮大な悪の世界があった…!
ヒーローは6人。でも、今回新登場のヒーローが一人。普段は軍人の姿をしているマーシャン・マンハンター。中盤やラストにワンシーンしか出ないが、彼は何者…?
EPにはジャレッド・レト演じるジョーカーが登場。何とも不思議なシーン。あれは悪夢か、それとも現実になるのか…?
アクションはさらに激しさ増し。
第2章でダイアナが語る太古の闘い。地球勢対ダークサイド勢。JW版より過激となり、アメリカではR指定になったとか。まるで、スナイダーのもう一つの人気作『300/スリーハンドレッド』のよう。
アクション・シーンはスナイダー十八番のスローモーションが炸裂しまくり。ケレン味たっぷり、これでもか!と魅せる。
監督共々降板したジャンキーXLことトム・ホルケンボルフが改めて音楽を担当。全編に渡って重厚な音楽が鳴り響く。
そして、クライマックス・バトルは途中から大きく変更。JW版を見ていても全くの別展開だが、まるで未来へ託すかのように、若き2人のヒーローが活躍する。
でもちょっと残念だったのが、JW版でバトル中にスーパーマンが人々の悲鳴を聞き、救出に向かうシーンが無かった事。あれこそがスーパーマンなんだけどなぁ…。
映画の歴史の上で、諸事情で別バージョンが存在する作品は結構ある。
監督のこだわりで幾度も再編集を行ったバージョンも多い。
オリジナルと別バージョン、どちらが好みか。
勿論それは人それぞれ。
でも、これだけは言える。
今回、ZSCを見れて本当に嬉しい!
先述の通り、JW版も嫌いではない。
だけどやはり、敢えてどちらかと言われたら、こちらを選んでしまう。だって、この圧倒的な見応え!
もし、前後編に分けて本作が公開されていたら、DCユニバースの今は…。
いや!
『ジャスティス・リーグ』の後、『アクアマン』『ハーレイ・クインの華麗なる冒険/BIRDS OF PREY』『ワンダーウーマン1984』、間接的な『シャザム!』、単体の『ジョーカー』とヒット作、高評価作続く。
そこに満を持してのZSC。
そしてこの後も、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』、『ザ・バットマン』、『ブラック・アダム』、『ザ・フラッシュ』(←一番楽しみ!)、『シャザム!2』、『アクアマン2』『ワンダーウーマン3』と続々待機。
よく言われるDCはマーベルに比べると…。
そうではない。
今こそ最高の、“DCの時代”なのだ!