「アメコミ神話」ジャスティス・リーグ ザック・スナイダーカット 柴左近さんの映画レビュー(感想・評価)
アメコミ神話
世界三大オタク監督をご存知だろうか。
諸説あるが、個人的にはクエンティン・タランティーノ、ギルレモ・デル・トロ、そしてザック・スナイダーだと思っている。
前者2名は大の日本カルチャー好きでよく来日しているのですぐ思い付く方も多いと思うが、スナイダー監督のアメコミオタクぶりも作品を鑑賞するとひしひしと伝わってくる。
スナイダー監督の作品は人を選ぶ作風である。
前作「マン・オブ・スティール」や「バットマンVSスーパーマン」は批評家などからの評価がまずまずだったり、マーベル映画の勢いで世間的にもあまり良い待遇では無かったが、玄人のアメコミファンはその圧倒的なビジュアルで世界観を忠実に描いた作風を愛してやまない。
そしてその監督の熱狂的なアメコミ愛とファンたちの思いが一つになって生まれたのがこの「スナイダーカット」だ。
ここまで監督とファンとの距離が近い映画作りが今まであっただろうか。
ファンが声明を集め実現まで漕ぎ着けた映画として、映画史的にも珍事として語り継がれることになる偉業である。
製作されることが決定し、4時間超えの大作になると知ったファンは正に熱狂。作品が完全な形でこの世に出るのは嬉しいし、「ウォッチメン」や「B vs S」のディレクターズ・カット版を鑑賞してきたファンはスナイダー監督は長い映画ほど魅力を発揮できることを知っているからである。
さて、内容についてだが今作は更にスナイダー節炸裂で、より人を選ぶものになっている。前作までのDCEU映画を観てない人はそもそも門前払いで、観てるには観てるけどそこまで好きじゃない人もあまりしっくりこないだろう。
4時間2分というとてつもない長さ
スローモーション満載のアクション
連続性に乏しいカットの連続
ダークで神話的な世界観
新たなヒーローの参戦
待ち望んでいた作品ではあったのだが、流石に鑑賞には疲労感が伴った。しかし終盤になるにつれて興奮冷めやらぬ自分のテンションに気づく。
劇場公開版に比べて登場人物たちに対する愛が半端ない。特に若いヒーローであるフラッシュやサイボーグは観賞前と後とは印象が全く異なる。その他細かなディティールも全て作品に対する愛が成せるものであり、ビジネスライクでアメコミを撮っている監督には絶対に真似できない所業である。
ジョーカーとバットマンとの対面でラストを締め括るのは感涙もの。
当初監督はこのシーンをバットマン役の俳優のベン・アフレックとジョーカー役のジャレッド・レトを自宅に招いて撮影するつもりでいたという。公開用ではなく、自分が監督としてDCと別れを告げるために撮ろうとしたこのシーンは台詞も全てスナイダー自身が考えたもので、それが作品となって観れるというのはこの上ない喜びだ。
映画は先の物語を想起させる展開で幕を閉じ、鑑賞者をもやもやさせるが、一先ずこの作品が完成したことに感謝。