「観るなら劇場がいい映画」太陽とボレロ デブリさんの映画レビュー(感想・評価)
観るなら劇場がいい映画
水谷監督の映画でこれが一番好きかもしれない。クラシックが好きだ!オーケストラが好きだ!っていう初期衝動がシンプルに前へ出ていて見やすい。「アルルの女」とか「ボレロ」とか劇中で長めに演奏される曲たちもキャッチーなのが選ばれていて(サックスの曲は知らないけど)、演奏シーンを見るのが楽しい。
ただ、交差点で事故寸前だとか田口浩正さんのくだりとか今なんでそれ投げたとか、何のためにこんな描写を?と首をかしげたくなるシーンは多々ある。そんな言い方するかなとか、今の言葉にリアクションしないんだねとか、セリフのやりとりもしっくりこない。でも、そこはしょうがないのかも。水谷豊さんってすごくいい人の気がするけど、かなりの変わり者でもあると思うし。なんかこう、そんなまじめに怒ってもさ。豊さんだし。
檀れいさん、最高に美人だな!っていうカットがいくつかあって眼福だった。こういう映画で奏者でも指揮者でもない立ち位置の主人公だし、やりにくいとこ多々あっただろうに、さすが根性すわってる。石丸幹二さんとか河合我聞さんとかは変なこといっぱいやらされてたけどもう開き直って楽しんじゃってる感じで、なんか手を合わせたくなる。
町田啓太さんのお芝居が私は好きだった。共演陣は昭和っぽいセリフ回しをそのまま忠実にやってたと思うんだけど、そこと相対しながら、令和の自然な言い方やテンポ感で返していて、なんていうか彼がこの映画を現代日本につなぎとめてくれた気がするよ。コミカルな場面もいい感じだった。
若手医師役の渋谷謙人さん、気になる顔だなあ。山中崇史さんがガッツリ出てて、これも水谷豊印。
ラストは本当にコンサートホールの客席にいる気分になれて快かった。この映画は変てこなところがたくさんあるけど、劇場で観ればまあまあ楽しめるところもあって(試写会場が丸の内TOEIだったのでスクリーン大きいし高いし見やすかった! ことりっぷ様ありがとうございました)、一方でもしテレビで観たら0点だなって、そういう映画だと思う。