劇場公開日 2021年10月29日

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「キャストの演技が素晴らしい。その点においては満点。大満足。」そして、バトンは渡された きんぴらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0キャストの演技が素晴らしい。その点においては満点。大満足。

2022年1月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 家族の愛が溢れるストーリー。

 まず、タイトルにした通りとにかく演技がすごい。

 ある家族の父娘を演じる田中圭さんと永野芽郁さん。実の親子ではない距離感がなんとも言えなかった。血の繋がらない親子がどのような関係かなんて知らないが、「きっとこんな感じなのだろう」と納得させられるほどの演技力だった。

 永野さんは本当にウザがっているように見せつつも親を想うシーンではまるで甘えるような表情。田中さんは剽軽だけれども、真剣な表情で娘にアドバイスしたり、笑顔で助力を加える。状況に応じた表情や声の使い方の豊富さに、驚嘆して作品に集中できないではないか。

 そしてある家族の母娘を演じる石原さとみさんと稲垣来泉さん。こちらも血の繋がりがないのだけれど、あからさまな愛情表現をぶつけ続ける石原さんに心酔する。「こんな奥さんが欲しい」と、思考が映画の本筋から外れて明後日の方向に行ってしまうレベル。稲垣さんはやはり前述の方々に比べると経験値の差なのか、表情はすごいのだけれど声の使い方がまだ自然ではない気がした。いや。十分すごい。すごいのだけれど、他の3人がどうかしているのだ。

 これらのことから、演者に関しては本当に満点をつけたい——、などと私が評することがおこがましいと思うほどの作品だった。素晴らしい。

 ではなぜ満点ではないかというと、ストーリーの構成がよくなかった。

 本作は「〈命をかけた嘘〉〈知ってはいけない秘密〉」とキャッチコピーを打っているのだけれど、これらが推測しやすいのだ。恐らく大抵の人が序盤で、大オチの想像は出来てしまうだろう。

 「あ〜、そのシーン見せないで! わかっちゃうからダメダメ!」などと心の中で叫びながら鑑賞していた。「伏線」ではなく「ネタバレ」に近いものを散りばめている感覚。正直、もっと分からないように工夫して頂きたかった。「〈命をかけた嘘〉〈知ってはいけない秘密〉」なのだから。

 後は、リズムが急に悪くなる。

 中盤で1つの感動の山が来るのだけれど、そこまではストーリーに無理があるにしろ進行スピードは悪くない。トントンと場面が切り替わり、時間が流れて行く。その後、ラストの大オチまでが長い。長すぎる。この物語の根幹を成しているのが終盤のシーンなのである程度間延びするのは致し方ないとして、そこに不要なシーンまで詰め込んでいる印象。

 例えば永野さん演じる優子は、専門学校卒業後就職するが肌に合わず退職してニートのように過ごす期間が流れる。そしてその設定は以降どこにも掛かってこない。ナレーションで5秒で終わらせられる、特に意味を成さない映像を放映する必要はない。どうも尺稼ぎをしている感覚に陥って、好きになれなかった。

 「ネタバレ映像」と「無駄なシーン」をカットすることで、中盤の山と大オチとの間隔、そして全体の放映時間を短縮できていれば、より鑑賞者の気持ちを盛り上げることができる作品だと感じた。

 キャストが度肝を抜かれるほどの素晴らしい演技をしているので、この辺りまで気を配れていたら満点をつけていた作品。

PS これから鑑賞する方がいらっしゃれば、それぞれの親の秘密を推測しないでおこう。秘密が分かってしまうと驚きも感動も薄れてしまうので、成り行くまま鑑賞することをお勧めする。

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きんぴら