「家族映画の最高峰と言っても差し支えない」そして、バトンは渡された といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
家族映画の最高峰と言っても差し支えない
レビューサイトでの評価が非常に高かったため鑑賞しました。原作小説は未読です。
鑑賞後にYouTubeでレビュー動画を探してみたら意外にも酷評が多いみたいです。レビューサイトは評価めっちゃ高いのに、なんだかギャップがありますね。原作が本屋大賞を受賞するほど人気の作品で、どうやらその原作小説から改変されている部分が結構あるみたいです。本作の肝の部分であるラストの伏線回収は映画オリジナルのようですね。軸となるストーリーは一緒なんですが、構成を変えることでまるでミステリのような伏線回収が繰り広げられるように改変されていて、その部分を「原作の雰囲気が壊れている」と感じてしまう人が結構いたみたいです。最近の邦画にありがちな安直なお涙頂戴に見えるシーンも正直あったので、そういうところが嫌われる原因なのかなぁ…。
しかし私個人はめちゃくちゃ楽しめました。本当に面白くて、家族映画の最高峰と言っても差し支えないレベルに気に入った映画です。キャストの演技、脚本やストーリー、演出に至るまで、挙げればキリがないほどに気に入った部分が多かったです。小説を読んでいないため「小説と違う」と憤慨する原作ファンの気持ちは推し量ることしかできませんが、原作を知らない身としては「一つの映画として観れば泣いて笑って楽しめる作品」という感想です。
予備知識は無い方がいいかもしれません。できれば予告編も観ないほうがいい。まだ観ていない方はこのレビューも今すぐ閉じた方がいい。そして今すぐ観てきて欲しい。面白いのは保証するので。
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幼いころは泣き虫で「みぃたん」というあだ名で呼ばれていた高校生の森宮優子(永野芽郁)は、両親の離婚や再婚によって4度も名字が変わり、現在は血のつながらない父親である森宮(田中圭)と生活している。クラスに馴染むことができないでいた彼女は、卒業式でのクラス合唱のピアノ奏者を半ば強制的に押しつけられてしまう。しかしピアノの練習をきっかけに天才的なピアノ奏者である早瀬(岡田健史)と仲良くなり、優子は早瀬に惹かれていくのだった。
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「みぃたん=優子」というのは映画後半で明かされるどんでん返しらしいんですけど、私は一番最初のシーンで「みぃたん=優子」だと気づいてそれが前提条件のように鑑賞していました。『アヒルと鴨のコインロッカー』とか『佐々木、イン、マイマイン』みたいな感じで現在と過去を交互に見せている演出なんだろうと思って観ていたので、普通に鑑賞後に他の方のレビュー見て「あれって別々の家族のように見せる伏線だったのか」って逆にびっくりしました。
登場人物全員が良い人でほっこりします。
主人公の優子も名前の通り優しくて思いやりのある子ですし、彼女の親代わりになっている森宮さんは言わずもがな。「歴代お父さん」「歴代お母さん」がみんな良い人ですね。
映画化もされた伊坂幸太郎の作品に『オー!ファーザー』という小説があるのですが、それとちょっと似た印象を感じました。
『オー!ファーザー』は母親の浮気によって父親が4人もいる高校生が主人公で、全く性格の違う父親たちとの交流によって主人公が色んなものを学び、成長していくという物語です。
本作の主人公である優子も、3人の父親と2人の母親から多くのものを吸収し、成長していきます。一見すると複雑で不幸な家庭環境のように見えますが、優子自身は全く不幸だとは感じておらず、むしろたくさんの愛情をしっかり受けついだことで、愛情あふれる優しい女性に成長できたのだと感じます。
自分も親の一人として優子の成長を見守っていたかのような、そんな気分になる素晴らしい映画でした。オススメです!!