劇場公開日 2023年3月17日

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「デリケートに好きしてる映画」シン・仮面ライダー ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0デリケートに好きしてる映画

2023年7月22日
iPhoneアプリから投稿

前作のウルトラマンで懲りたので、今回は初手からAmazonですごめんなさい。
正直、序盤からこれ最後まで観れないかも…と不安になった。
現場がゴタゴタした影響なのか、話の途中から始まったみたいだったし、スカしてて変なアングルでの説明がつづくばっかり、ぜんぜん乗れない。観客に橋渡しする気ないなこれって思った。

でも、そのあと1号ライダーがルリ子に雨に濡れた子犬みたいな目を向けたところから、萌えの電波が発せられ、だんだんバディの珍道中がほほえましくなって結局最後まで観てしまった。まあ池松くんの中に庵野秀明その人を見たというか…
皮肉とかじゃなく、アクション以外のシーンがよかった。

アクションは全然アガらなくて、空中でライダーがジャンプするショット(つまりオリジナルの要素)以外ほとんどかっこいいとは思えなかった。
だいたいがアニメ的な美意識に貫かれていて、最終的にこうなるんだったら、それまでの現場への指示とかすったもんだは何だったの?という気持ちに。うまくいかなかったから苦肉の策なんでしょうか。ただ、蜂オーグのハニメーションみたいのは突き抜けてて面白かった。

それとライダーらしくちゃんとバイクシーンがたっぷりある。ギミックが過剰すぎて果たしてかっこいいのかどうか私にはわからないところもあったけど。
マスクとかのデザインも安っぽくないし。
あと全体にロケーションが良いので画面がトリッキーでも持つ。そこはカントクのこだわりがプラスに働いた部分かな?iPhoneの画質もTVなら気にならない。

とにかくキャストに助けられている部分が大きいと思う。浜辺美波は正直不安だったけど、1号とルリ子の小柄で華奢で寄る辺ないコンビ感がよかったし、硬質なセリフをソフトに受ける池松くんの芝居もあって、とくに焚き火のシーンのあたりとか、ずっと見ていたい2人だった。
そこに突如カラっとした昭和の三枚目風を吹かせる柄本佑、ナイス。
ラスボスのあのキャラも、もし森山未來じゃなかったらと思うとぞっとする。しかしあのライオンキングみたいな音楽はいいのか。音楽は全体的にあんまりハマってない感じだった。
あとは長澤まさみの深キョンのドロンジョ並みのがんばり。ほぼ無駄遣い。

話はいつものカントクらしいインナーな主人公像で、自分と身内にしか興味がない。しかし池松くんのナイーブな芝居とはマッチしてた。塚本晋也とは「斬、」で組んでたし、そのご縁なのかな。
敵キャラのオチもまあそんなことだろうなと思ってた通りで、要するに戦うべき葛藤なんか初めからない。別のいつもの見慣れたやつ。アクション部門の手癖には厳しいのにそこの手癖感はいいのか。だいぶ追撮あったみたいだし、当初のプランがうまくいかなくて編集で作った結果なのかな。でも終盤の手持ちカメラのすったもんだはよかった。ただ長時間回した結果なのか画質は微妙。リハーサルなのかと思っちゃう。

結果としては今回はウルトラマンよりは全然楽しめた。主役がバディだったことと、あとはキャスティングがおもな勝因。
なんだかんだ、こんだけの役者を長期間拘束してるんだから、普通に恵まれた企画じゃんと思ってしまう。
それだけカントクの人徳と評価がすごいってことか。そりゃこのフィルムをどうにかしようといちばん頭を悩ませたのは庵野カントクなんだろう。そこは疑わない。でもだからって客が楽しめるとは限らない。
そもそも観客がここまで作り手に忖度し、気を遣うのってなんなんだろう。それはもはや私の知ってる娯楽映画じゃない。
あっ、素人は黙っとれ案件ですか?ですよね。

ipxqi