「客層からは漏れていると思うが、惚れ惚れはする。」シン・仮面ライダー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
客層からは漏れていると思うが、惚れ惚れはする。
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困っている。庵野秀明というひとが作る以上、度を越したマニアックな要素が入ってくるだろうし、世代的にはちょい後追いなので、その意図をすべて汲めるとは思っていなかったものの、思っていた以上の難物がきた。ライダーの造形、美しいトランポリンアクションなど昭和特撮に馴染んだ身にはたまらない要素が詰め込まれている一方で、ハニメーションを彷彿とさせるアニメ風アクションが混ざってきたりして、作品のバランスが掴めずに翻弄されるのだが、確かにどれもこれも濃厚に庵野秀明であって、強烈な作家性がモロ出しになっている作品だとは思う。
じゃあ面白いかというと、面白くはない。もう庵野的なものの先を見せてほしいというこちらの勝手な気持ちもあれば、予算のせいなのかそもそもオリジナルへのリスペクトからきた意図的なものなのか、にじみ出るチープさに心から乗っかれないもどかしさもある。この映画や物語が、どうしても切羽詰まったなにかに刃を突きつけているようには感じられず、形式や作法がいちいち空虚に思えてしまったからかもしれない(空虚さは庵野作品にはつきものとは思うが)。
さりとて思い出すのはライダーのカッコいいジャンプだったり宙返りだったり、やたらとカッコいい瞬間ばかりが脳裏に焼き付いている。それは動き、構図、画調といったさまざまな要素が組み合わさっているからで、それはそれでいい映画じゃないかと思えてくる。でも見直したらやはり、面白くはない、と思うんだろうし、それでも魅了される瞬間がときおり表れては、つい惚れ惚れとしてしまうんだろう。
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