「オトナのヒーローの素顔(PG12)」シン・仮面ライダー MP0さんの映画レビュー(感想・評価)
オトナのヒーローの素顔(PG12)
レビューの理由から先に。物足りなさとしては主要登場人物たちにスポットを絞っているため、シン・ゴジラやシン・ウルトラマンほその他の人たちがモブとして描かれていてショッカーのヤバさとか街が破壊されたりするような目に見えてわかりやすいカタストロフィーではなく、人知れず悪と闘うオトナの悲哀と孤独を背負った姿である点が仮面ライダーなんだよなという本当にどうしようもない個人的な理由で★4.0にしました。
以下、感想です。
本作は12禁(PG12なので鬼滅の刃無限列車編などと同じく子どもだけで観れるけど現実ではないフィクションという助言や指導が必要)ですが、それもそのはずでこのライダー(改造人間)は人間離れした怪力で殴る蹴るで他の庵野監督作品に観れるような血飛沫が結構飛び散り軽いグロさがあります。
しかも生々しさを抑えるために白黒やドス黒さを濃くして描くのでギリギリ12禁で上映ができた感じです。
本来ならターゲットの一つである幼稚園〜小学生よりも設定年齢が高いのは、作品に散りばめられた伏線やストーリーの難解さ(庵野なので…)以上にこうした表現の問題も当然あったと思います。
それはさておき、当然ながら本作のコアなターゲット層はかつて昭和ライダーを視聴してきた世代でしょう。
テーマは「変わるモノ。変わらないモノ。そして、変えたくないモノ。」と定義され、その意味が仮面ライダー1号、仮面ライダー2号、そしてタイトルであるシン仮面ライダーというビジュアルや風に揺れる赤いマフラーに込められた願いを含めてファンの間でも論争の起こる解釈に対する庵野監督ならではのアンサーと原作者である石ノ森章太郎先生への惜しみないリスペクトが込められていると思います。(こういう所が庵野監督の素敵な所でかつ変態的な所)
では肝心のストーリーはと言えば、大切な人を失ったオトナの哀しみと孤独。託された想いを受け継ぐ人たち。そのために世界を作り替えようという…ん?何処かで聞いたことのあるアウトラインで描かれています。
森川イチロー(兄:森山未來)⇄碇ゲンドウ
森川ルリ子(妹:浜辺美波)⇄綾波レイ
感情を表に出さないドライなキャラのようでいて、微笑んだ時の可愛さとか完全にヤシマ作戦後の綾波レイです。
イチローが本郷猛に「妹と寝たのか?」と問いがありますが、着替えシーンなどもしかして没になったプロットをぶっ込んだネタへのツッコミのように思えてニヤリとする場面も。18禁や15禁なら入れていた可能性を想像させる演出というのは妄想が過ぎるでしょうか。
庵野作品でそう思わせる描写の(露骨ではないにしても匂わせるシーンが)ない方が珍しいのですが…言い淀むような一瞬の間があるような気がしたのは私の妄想でしょうか?
しかしこれがかえってヒーローの孤独と戦う理由として、また仮面ライダーではなく本郷猛たちのヒューマンドラマとしての面を際立たせる仮面になっているような気さえします(庵野監督の遊び心というか描かない事で伝えるのはエヴァからのオハコですね)
そう言えばショッカーの怪人たちが倒されると泡になって消える演出もまるで人類補完計画のLCL化のように見え、ルリ子と本郷猛が線路で向き合うシーンなどはシンエヴァのあのシーンを否が応でも思い起こさせ、ビデオメッセージも補完計画の心象描写と位置付けとしてはそっくりです。そういう意味では人は多量に亡くなっているが消え方が泡なので儚さというか、現実感がないというか。
これらを表現のバリエーションの少なさとするのか、庵野節やテンプレートと捉えるかは人によりますが私は嫌いではありません。何故ならエヴァの元ネタというか答え合わせをしている気持ちになるからです()
こうなると庵野作品の「シン◯◯」をしっかり踏襲しつつ実写では皆勤賞の政府の謎の男(竹野内豊)の謎にも遂に触れます。しかし斎藤工演じる補佐役の名前が…(笑)
シン・ゴジラとシン・ウルトラマン、シン・仮面ライダーは同じ世界線(マルチバース)なのか。それとも異なる世界線を謎の男は移動しているのか。それを匂わせる事で遊んでいるのか。
敵役の怪人もハチの怪人などライダーっぽいキャラが登場したりしてなかなか戦闘シーンはかっこいいです。
コウモリは予告でビジュアルこそ出ていましたが闘い方にアレ?と思う描写もあります。(知略を駆使して相手を絡めとるタイプなんでしょうけれど序盤とは言え雑魚くさい…)
仮面ライダーらしい闘い方や効果音とBGM、そさてテーマソング、ジャンプなどのアクションシーンも盛り沢山で、劇場版のエヴァっぽい物量と激しい動きもあり見応えもあります。
あとは専門用語が相変わらず多い所も庵野節というか(笑)
ちなみにプラーナはヨガなどでも出てくる人の霊的エネルギーの事で、神秘世界の事を多少齧ると必ず出てくる単語ですが独自の解釈がされていますね。
仮面ライダーの眼が赤く光ったり、鼻の所が点滅したりはまるでPCの、またはウルトラマンのカラータイマー的な設定にも…。
個人的に好きなシーンはサイクロン号が二人の後ろを追いかけてくる所です(かわいい♡)
バイクも変身(変形?)するシーンとかは流石の変態(褒め言葉)っぷりです。
あと本編関係ありませんが新聞広告の若い頃の庵野監督のライダー姿など仮面ライダーが好きな人が作った仮面ライダーである点は観る側が当然理解していないと齟齬が生じる作品であると思います。