「媚びなかった庵野」シン・仮面ライダー 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)
媚びなかった庵野
かつてシン・ゴジラに度肝を抜かれ、以降庵野さんを崇拝するようになった一人です。
去年のウルトラマンはまあ光の巨人だしゴジラよりはコミカルになってそれも原作リスペクトという事で、という事で楽しみました。
一方で、このシン・仮面ライダーは予告編からしてシリアス調かつ中々内容を伺わせない雰囲気でしたので、久しぶりの”庵野監督作品”という事も有ってかなりの期待をしていた。プロモーション映像なんかも完璧な初代のOPを作って、もうプンプンしていた!(名作臭が)。
いやあ~~まさか豪華俳優陣で徹底的にオ○ニーするとは・・・・・。
冒頭からチェイスシーンで始まり『お?良いぞ良いぞ!』と思わせてくれたのも束の間、その後すぐに棒立ち棒読み演技でまだ何の感情移入も出来ない仮面ライダー1号となった本郷や緑川親子の葛藤を見せられる。
この時点で勘の良い人は察しなければいけなくて、本作は誰かに感情移入したりだとかそういう楽しみ方をする作品ではないという事が恐らく裏メッセージとして描かれていたのだと思う。
強いて言えば、本作はあの頃、1970年代の、50年前の初代ライダーを観ていた世代が、その仮面ライダーという”概念そのものに感動し”感慨深く感傷に浸る作品という具合なのだ。
だから本作という概念そのものに感動するのであって、こんな令和の時代に初代の本郷猛の仮面ライダーが大作実写映画として蘇ってきた!!という、もうその事実だけでティッシュをシュコシュコ出来る層しかお呼びじゃない。そんな風にも言われているようで、そこまで読み解け無い一般層からすると早くも疑念が浮かんでいた事だろう(笑)。
もうこの映画が出来ただけでお涙頂戴要素は満たされている・・・・・というのが監督のお考えなのかもしれない。。。。。(ナンダソレ)登場人物達は最早意図的に棒的な存在にさせられていた?のかも(前提として俳優陣の熱演は素晴らしかったですよ)。
話を戻して会話劇がそんな感じなのは良いとしても、肝心の戦闘シーンもどこかのっぺりしていて微妙、、、というか変。初っ端蜘蛛オーグとの戦いも普通のテレビ放送してる仮面ライダーのクオリティそのもので、スーツを着た役者さん!!っていう雰囲気がダイレクトに来るから劇場クオリティを期待して観に来た身からすると早くも『あら?』という風に首を傾げてしまうのは否定できない。
勿論それが仮面ライダーの味わいで庵野さんもわざとそれを再現してそういう絵面にしているというのも分かるんだけど、もっと最初の大一番では気合の入った何かを期待してしまうので、そういう側からすると『あ、もうこういう締まりのない絵面が来ちゃうんだ』という風に萎えてしまった。
『ま、まあオーグは他にも出てくるし~?(汗)』『2号もまだだし森山未來もまだだし~?(汗)』
まだこの時は希望を持っていました。
続いてコウモリオーグ。もうね、NHK教育に出てきそうな小さい子はトラウマになっちゃう面白キャラみたいなそんな奴がチープなCGでパタパタ飛んでるのを見せられるわけですよ(笑)。で、ニセ浜辺美波が会場を埋め尽くして何が始まるんだ?と思わせといて結局ショットガンで翼もがれるっていう。いや大量の浜辺美波と戦わんかい!!
ただこの時のバイクで追いかけるシーンは音楽とバイクのカッコいい変形シーンも相まって作中ピークとも言える場面だったのは言及しておきたい。もっとこういう仮面ライダーが純粋にカッコいい場面がCGでも良いから沢山見られるのを期待していたんだがなあ。この辺斜に構えずにやって欲しかったよなあ。ここは本当に唯一熱くなれるポイントだったと思う。
その先も色々とオーグが出てくるのだが、長澤まさみ出演辺りからある程度察せられる事が一つ有って、最早『どんなオーグが出てくるんだろう?』『どんな特殊能力を持っているんだろう?』みたいな少年的な楽しみ方では無く、『次はどんな豪華ゲストが出演しているんだろう?』という安っぽい楽しみ方になっていく。
ただそれでも西野七瀬演じる蜂オーグのクオリティは結構良くて、着物の組み合わせやどことなく顔も似ている雰囲気からハリケンジャーのフラビージョを思い出したのは僕だけで無いハズ(笑)。とにかく全オーグ通してもこの西野七瀬演じる蜂オーグだけは断然良かったと言えよう。別撮りだと思うけど西野さんも他のオーグ達があんなクオリティだとは思わなかっただろうな(泣)。
そしていよいよ待ちに待った仮面ライダー2号、一文字隼人の登場!!ここはライダー同士という事も有って絵面も持って良い感じ・・・かと思いきや、シン・ウルトラマンでも見せられたCG全開の何かちょこまか動いてる重力無視のお人形劇を見せられてガックン・・・・。
いやいや!こここそ硬派にアップ気味で火花散らしながら、でしょ!!??絵面もシン・ウルトラマンの時と同じで仮面ライダーもウルトラマンやんけと。そもそも序盤で握りこぶしに血飛沫滴らせてる描写をあれほどしつこく見せてきた癖に、結局はCGでドラゴンボールされるんだからもう何かね・・・・。
ウルトラマンの時は庵野監督じゃなかったからあんな変なCGに・・・って思ってたけど、元々このクオリティだったんじゃんっていうね。シン・ゴジラの白組とは違うからしょうがないんだろうけど、日本のトップクリエイターからちょっとでもハズレるとこんなもんなんだっていうのはかなり残念と言わざる得ない。
そして最後、予告編からも期待していた森山未來登場!!『もうお前に劇場内全員の希望を託したぞおおお!』と言わんばかりの期待に答えてくれそうな圧倒的ビジュアルと雰囲気。『ああ、なんだかんだラスボスは凝ってんじゃん(安堵)』。そう思っていた時期が僕にも有りました。
まさかの暑苦しい取っ組み合いをここでやるとは(笑)
一文字隼人とはウルトラマン宜しくな超人アベンジャーズをやった癖に、この超能力使える”蝶オーグ”との最後の対決はまさかの相撲取りだなんて・・・・。せっかく眠い目を開き始めてた隣の彼女やキッズ達もまた寝ちまったぞ。
地味にライダータイプだったんだからお互いにライダーキックをかまし合うだとか色々出来たはずなのに、さっきまで両手から変な気を出してた森山未來ももうエネルギー切れなのか取っ組み合いに付き合ってあげる始末(笑)。
あとさ、蜂オーグ辺りからずっとそうなんだけど絵面が暗い!!!暗いのよ。蜂オーグはまあアジトがそんな感じだったから良いとしても、森山未來とのラスボス戦とか何やってるか分かんない。予算があの辺で尽きたのか?と勘ぐるレベル。せっかく大量のバッタオーグに襲われるシーンも暗闇で誤魔化してもCG全開のチープさが出ていて残念だった。
序盤で見せられた鮮血による【これはリアルな仮面ライダーですよ】というメッセージはどこへやら。後はCG祭りにプラスしてテレビ版の仮面ライダーと変わらない雰囲気の、まあ良く言えば普通の仮面ライダーを見せられる。ストーリーラインや純粋な受け止め方としてはチグハグな印象が強く、エンドロールが流れ始めると『庵野さんは好きそうだな~(笑)』という苦笑いが自然と出た作品だった。
そもそも、かつてシン・ゴジラでは現代的な解釈で現代ニッポンに有事が発生した際のドキュメンタリー的な側面も有ったのが少しズルかったのかもしれない。庵野さんは本当はこっち系の方が好きで、シン・ゴジラはある意味奇跡的にリアリティの有る災害・戦争対策映画のような完成度を誇ってしまった。
だから僕のようにあの時シン・ゴジラに感動し脳に刷り込まれてしまった層からすると、そういった庵野監督によるシン・シリーズは現代解釈版の豪華実写化版のような位置づけをを期待してしまっているのかもしれない。だが、実際には庵野監督の本来のテイストはこんな感じなのだ。ゴジラはゴジラで突き抜けて、ウルトラマンはウルトラマンで突き抜けて、仮面ライダーは仮面ライダーで突き抜けた。その結果が、ゴジラほど政府的世界的国家的でも無く、ウルトラマンほど宇宙的神秘的でも無い。
硬派さで言えば過去一で、より少人数の人間ドラマに絞られた濃厚な庵野汁が出たのがこのシン・仮面ライダーだったのだ。
だけど、やっぱり娯楽映画で日本の実写界に置いては大作映画である位置づけな以上、単純な面白さや豪華さをもっと求めてしまうのが人の性だ。だが、庵野監督は媚びなかった。そしてそれを受け入れていく洗脳時間のようにも感じた2時間だった。そういう諦め的な何かが、シン・ウルトラマンの時から引っかかっていた何かの解答を一年越しに得られたかもしれない。
ただ、それでもやはり金がモノを言う世界なのだ。去年のワンピースが大ヒットを記録したのも、Adoによる歌もそうだが何より普段ワンピースを観ていない層が観に行っても理解できて面白かったからという側面が有る。そういった大きな、大きすぎるコンテンツに今更入っていけないという層を上手く救っていくのも大事な作業だと思うのだ。
だからこそ、ある程度はお約束的な部分や流れを踏襲せずに、誰が観ても楽しめる、それこそ本来のお客さんである子どもたちでも純粋に楽しめる熱い作品にするべきだったと思うのだ。
これでは庵野監督が満足しただけのオ○ニーで、未来の仮面ライダーは勿論、邦画界にも寄与しないと思った。全国公開の大作映画である以上は、もっと考えて欲しい。ほんと上から目線だけども、こういうチャンスはそうそう無いのだから。僕は、俺は、バイクで疾走しながら背景が爆発しまくる絵面が観たかった。なんだよアレは。モロ資料映像みたいな画質で爆破する小屋はなんなんだよアレは。
あと最後にこれだけは言いたい。
『『『『『『『初代OPの取り直したやつ流れないんかい!!!!!!!』』』』』』』
以上、個人的な感想。