劇場公開日 2023年3月17日

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「やっちまったね、『庵野』さん」シン・仮面ライダー ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5やっちまったね、『庵野』さん

2023年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

難しい

〔仮面ライダー〕は小学生の頃
リアルタイムで見ていた世代。

とは言え、そこは田舎のこと
首都圏のように土曜の19:30~ではなく
日曜の朝10:00~の、しかもかなり日にちが遅れてからの放送。

ため、初回が丁度、小学校の運動会にぶち当たり、
全校生徒の誰もが(除く、病欠者)
第一話の〔怪奇蜘蛛男〕を見ていないとの
殆ど笑い話。

当然、
新聞やテレビ等でも取り上げられた
「仮面ライダースナック」にまつわる騒動も
良く記憶している。

なんでこんな
やくたいもないことをつらつらと書き連ねているかと言えば、
本作に対しては述べることが殆ど無いような状態。

正直、『庵野』さん、失速してしまったなぁ、と。

〔シン・ゴジラ〕〔シン・ウルトラマン〕の系譜上に在るものだと
てっきり思っていたのに。

いや勿論、古いお話に
最新の科学を取り入れ、リブートするとの姿勢は共通。

が、会話を始めとするギャグはダダ滑り、
唐突感もあり、何故入れたのかすら判然とせず。

トンネル内でのバイクでのチェイスシーンは
〔トロン(1982年)〕で観たかのよう。

パイプラインをぴょんぴょんと
蚤のように飛び跳ねる場面に至っては
〔スパイダーマン〕もかくやで
既視感がありまくり。

目新しさがまるっきり無い。
格闘シーンのカット割りはぎくしゃくでチープだし。

一方で、役者たちの棒読みに近い科白は
捻じれた方向性の原作リスペクトとは評価。

「立花」「滝」等の名前の転用、
バックミラーの形が古い乗用車車の使用、
闘いの場所がダムや荒野等、は
同様の思惑か。

『石森』作品へのオマージュとしては
〔ロボット刑事K〕を出演させてみたりと
それなりに感じはする。

とは言え、構成そのものがかなり陳腐なので、
さほどの補強にはなっていないのが残念。

ざくっと纏めてしまうと、
ザ・昭和の残滓を拾い上げ、新たな要素を付加し紡いだものの、
『石森章太郎』のダークな世界観の再現には押し潰されてしまった帰結とみる。

正義のりこうと併せた、全体を貫くテーマも
どうにも浅薄。

不完全な「良心回路」のせいで
善・悪の狭間で苦悩する〔人造人間キカイダー〕、
「ブラックゴースト」に囚われ(やはり)改造されてしまう
〔サイボーグ009〕と、『石森』作品には近似の設定が多々。

自分に力を与えや者への反逆や
主人公(たち)の孤独な闘いと葛藤。
それだけをきちんと引き継ぐだけでも
十分に面白い作品になったと思うのだが。

ジュン一