「庵野!!まずは君が落ち着け!!!」シン・仮面ライダー 葉読五式さんの映画レビュー(感想・評価)
庵野!!まずは君が落ち着け!!!
2時間の上映が終わってシアターが明るくなった後、最初に出た感想は「え、ええ…?(困惑)」だった。脳内の千鳥ノブがちょっと待ていボタンを連打した2時間、その整理がつく前に気が付いたら終わっていた。
僕は幼少の頃は仮面ライダーの大ファンだったが、しかし初代ライダーはYouTubeにある1話しか見ていない。しかし冒頭のクモ怪人戦、「ここ1話で見た!」だらけのやりすぎオマージュがこれでもかとギッチリ詰め込まれる。どうもネットを見てる限り、全編このノリだったようで、もし原作を見てたら頭パンクしていたのではないだろうか。
その後もとんでもない展開、演出続き。早口に語られる変身の基本概念。分かりやすく「後半デレるな」となるヒロイン。まさかの政府協力者として出演する総理補佐官とウルトラマン。70年代を思わせる構図&画質で爆走するライダー。微妙にクオリティが低いコウモリ怪人のVFX。空飛ぶサイクロン。ここまででまだ半分過ぎていない。
一方でストーリー、キャラ描写はやや薄味ではあるものの、変にブレたりすることもなくしっかりと整っている。全てのキャラクターに魅力があり、特に後半からの出場ながら存在感で全く劣らない一文字隼人の描写は上手いとしか言えない。暴力を嫌い、殺しに葛藤する1号も、その性格がただの設定でもなく、かと言ってストーリーで擦りすぎてただのヘタレになるわけでもない絶妙なバランスで、優しく哀しいヒーローを描けていた。とはいえキャラ、ストーリーの掘り下げは浅く、しかもセリフで説明されることも多いのでそれを不満に思うのは最もだ。
そして問題の後半。すべての人類の魂を別世界に移す計画を試みる、かつて母を殺された男。いや人類補完計画じゃねえか!やっぱりエヴァから逃れられてないじゃねえか!と思った人がほとんどのはずだ。しかもこの黒幕が青い仮面ライダーとなり「仮面ライダー0号」を名乗る。完全にエヴァ0号機である。
攻めすぎなカメラワーク。微妙なVFX、もう少し欲しい気もするストーリー。好みが分かれそうな戦闘シーンなど、正直減点ポイントも多いのだが、しかしそれを補って余りあるカッコよさ、それと隣り合うライダーの悲哀が描かれていた。しかしそれにしてもちょっとやりすぎではないだろうか…より多くの人に楽しんでもらうことを意識したと監督は言っているが、正直それが達成されたとは言い難い。恐らくかなり賛否が分かれるだろうが、何か引っかかるものがあってとにかく語りたい、というのが共通認識となる映画だろう。
元々エヴァを産み出す前から庵野の世界観はこんな感じでしたね。
エヴァに長い時間をかけて完成させたのに、まだ彼には足りないのでしょう。
自分の原点に戻って、それらを庵野色でアレンジしていく…そんな昭和ヒーロー補完計画を着々と進めているのかもしれません。
「シン」ブランドでとりあえずの興収は得られるのをいいことに好き放題やってた感じだと思います。別に悪いことではないと思いますし、ちょっと羨ましい気もします(笑)