「今までのシンシリーズが90点なら今回は79点。」シン・仮面ライダー ナリさんの映画レビュー(感想・評価)
今までのシンシリーズが90点なら今回は79点。
シンゴジラ、シンウルトラマンが90点の高得点だとしたら、今回のシン仮面ライダーは、ギリギリ1点足りない79点と言った感じだろうか。
映画冒頭、謎の車両に追われバイクで逃げる本郷猛と緑川ルリ子。ルリ子のピンチに颯爽と現れる仮面ライダー! そう、映画のツカミは完璧だった。
完璧だった……。完璧だったのに、なぜだ?
なぜか、見ていて微妙な気分になってしまう。
まず、ストーリーのテンポが良すぎて内容に入っていけなかった。
クモオーグを倒したらすぐにコウモリオーグ。コウモリオーグをすぐ倒したらハチオーグと、ポンポン話がスムーズに進みすぎて、怪人たちの存在が味気ない。
(このダイジェスト感はいろんな意味で勿体ないと思った。)
まぁ、言ってしまえばシンウルトラマンも、ダイジェスト映画なんだけど。
ウルトラマンの場合、「怪獣は街を壊す」「宇宙人は地球侵略」と、あらかじめ決まっているから、テンポが良くても違和感なく悪役として勤めを果たせていたんじゃないかと思う。
その点、今回の怪人たちは、それぞれ「自分の信念」を持ちながらも、あまり深掘りされず倒されてしまう。(コウモリオーグの緑川博士に対するライバル心だったり、ハチオーグとユリ子の関係だったり、カメレオンはクモの仇だったり)
これならば、単純にライダーたちの命を狙う刺客として次々と怪人が現れた方が遥かに楽しかったかもしれない。
他にも、クライマックスの戦闘はアレで正しかったのだろうか?
ショッカーライダーを相手に立ち向かうダブルライダー。本来ならここで観客たちを興奮させなければならないはずなのだが、暗闇とゴチャゴチャしたカメラカット、謎CGで、何が繰り広げられているのかがわからない映像がスクリーンに展開する。
アレはもしかして、監督が語っていた「昔のテレビは画質が悪く、はっきり見えなかったが、暗闇に光るライダーの目がナニかと戦っている姿がかっこよかった」という再現なのか?
(もし、そうだとしたらあの再現は違う気がするぞ……)
緑川イチローvsダブルライダーも、もっと白熱した大バトルになるのかと思いきや、静かに決着がついてしまうのも、残念。
ただ、柄本佑さんが演じる2号はよかった。1号vs2号の戦闘シーンから、仮面ライダー第2号を名乗る展開もよかった。
それに、映画のオチも個人的にはアリだと思う。ラストのあのシーンのおかげで、自分はこの映画を評価しようと思えた。
公開から1日経とうとする今、賛否両論とは言うものの、かなり否のレビューが目立つ。
「つまらなかった!」「アクションがダサい!」「庵野監督やっちまったなぁ!」と観客から沢山の石を投げられるシン仮面ライダーを、私は優しく抱きしめて「よくがんばった!君も立派な仮面ライダーだ!」と励ましてあげたい気分ではいる。