配信開始日 2022年3月18日

「男女関係という日常の最大ミステリー」底知れぬ愛の闇 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5男女関係という日常の最大ミステリー

2025年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

男女の関係ほどミステリアスなものはこの世の中に無いのかもしれない。
我々は他のカップルを見てしばしば不思議に思うことがある。
「何故?」
ビックという人物
彼は今仕事をしていない。
彼は軍用ドローンのチップ開発に関わっていた。
軍用故に秘密は多いのだろうが、作家ダンが言ったようにその仕事そのものはあまり褒められるものではない。
お金持ちではあるが、家族とカタツムリ以外に興味のあるものは無いのかもしれない。
ビックは自分を「普通じゃない」という。
確かに、それは、そうだろう。
食用ではないカタツムリを大量に飼っているのも普通じゃない。
「カタツムリは3km先の交尾相手を探し当てる」
カタツムリはビック自身であると同時にたくさんの男たちでもあるように思える。
どんなに引きはがしてもまた別の男を探して友達になる妻メリンダ
渓谷で殺したアニーの財布をカタツムリの巣箱に入れるのは、アニーもまたその一人であるということだろうか。
そして、それを表現するビックは、やはり普通じゃない。
またこのカタツムリというのはヌメヌメしていて気持ち悪いものだが、そのヌメヌメこそビックの心の中の象徴だろう。
さて、
男女の関係は時に他人にはまったく理解できないことがある。
この物語自体がそのラインを狙っている。
その「わからない」というところがこの物語の表現したかったことだろう。
わからないのだ。
わからないのが男女関係であり日常どこにでもあることだ。
幼い娘は人を殺しということそのものが、単純に正しいとか悪いとか判断しない。
それ自体がパパにとっての正解だったということを理解しているように思う。
理解しているからこそ、その先の「どうやって殺したの」かが知りたい。
どうすれば殺せるのかに興味がある。
そしてこのタイトル
日本語でつけられた「底知れぬ愛の闇」
英語の「DEEP WATER」
プールもあの渓谷の川も決して深くはない。
深さとは心であり水ではない。
法律なども関係ない。
そこに触れられる物語 映画 恐ろしくもある。
メリンダ
彼女もまた普通ではない。
メリンダの夫以外の男といちゃつく行為は友人らも注意を傾けている。
ビックは彼女を「子供だ」と一蹴するが、メリンダからすれば「感情を出さない」イライラや彼女自身が何をしても結局「私のためなんでしょ」と心の中ではわかっている。
メリンダがアリーの財布をカタツムリの箱の中で発見した時、すぐにダンに知らせたのだろう。
私立探偵はすぐに見つかりクビになっていた。
ダンは濡れていた財布と渓谷へ行ったことを聞き直ちにそこへ向かった。
そこで見た死体 確信
同時にメリンダは家を出るために荷造りをするが、娘がトランクをプールに投げ捨て「私はどこにも行かない」と宣言した。
これはメリンダにとって驚きだったが、彼女が以前ビックに呟いた「私のためなんでしょ」という言葉の真意に、自分自身が気づいたのだろう。
娘の揺るがない言動に夫の核心とそれに甘えてきた自分自身を初めて感じることになった。
そうして冒頭のシーンと同じようなシーンに返ってきた。
マウンテンバイクで帰ってきたビックは階段に腰かけている妻を見る。
「何?」
「何でもない」
何も変わってなどいなかった。
それこそが夫の気持ちであり、夫そのもの。
メリンダは「何であなただけ私と居たがるの?」
普通じゃない者同士だからこそ分かり合える部分がある。
これが一周まわって再確認し合ったのがこの物語だろう。
確かに普通じゃわからないし、そもそも他の男女関係などわからないものだ。
相談を受けてもうまく理解できない部分が多分に存在するのが、男女関係だ。
この点を突いたこの作品はなかなかのものだ。
彼らの関係は彼らだけのもので我々には「わからない」で正解なのだろう。

R41
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