「【リアリティについて】」ブラックバード 家族が家族であるうちに ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【リアリティについて】
2年以上前に、この作品を観ていたら、印象は全然違うものになっていたかもしれない。
なぜなら、約2年前の2019年6月、ある日本人女性の安楽死を取り上げたNHKスペシャルを観たからだ。
だから、この作品を観る前に、このレビューは読まないで欲しいし、もし観賞後であっても、ストーリーに心を揺さぶられた人も読まない方が良いように思う。
このレビューは、僕の備忘録だ。
そして、スコアも参考程度だ。
NHKスペシャルは、身体の自由や機能が失われる神経難病に犯され、耐え難い激痛はそのままに、いずれは胃瘻と人工呼吸器が必要になると医者に宣告され、自殺未遂を繰り返す日本人の女性が、スイスで安楽死を遂げるまでを追ったドキュメンタリーだ。
スイスは厳格な審査を通過すれば、外国人にも安楽死を認めている。
葛藤を重ねる家族は、自殺も厭わない彼女の願いを受け入れざるを得ないと決断する。
最後まで反対する妹もいたが、スイスに駆けつけた他の姉妹に見守られ、医師が最終意思確認をした後、自ら点滴に薬物を注入するボタンを押し、眠るように一瞬で逝くところまで放送されたのだ。
生と死の境目なんて、こんなものだったのかと感じるほどの、呆気なさでもあった。
NHKには、多くの批判が寄せられたらしいが、医療技術が大きく発達して、なかには激痛や心痛を伴いながら、死はもうそこにあるのに、無理矢理生き続けなくてはならないという、矛盾があるのだと改めて認識させられる。
見守る姉妹に丁寧に感謝を伝え、最後に自ら点滴に薬物を流し込む場面は、今でも僕の脳裏に焼き付いている。
答えは出ないままだが、厳格なルール管理が行えるのであれば、安楽死は選択肢としてあっても良いのではないかと思わせられる。
もし、NHKのオンデマンドと契約があって、興味があったら、一度観て欲しいテーマだ。
日本の法律で、こうした最後を遂げた人の遺骨の持ち込みは認められていないらしく、スイスの川に散骨されていた。
さて、映画の方は、葛藤する家族の問題も明らかになり、安楽死そのものもそうだが、家族の物語でもあることが判る。
また、社会として、家族として、安楽死を考える機会にはなるかもしれない。
だが、あの圧倒的リアリティを見せつけられると、複数の場面で、どうしても迫るものなど物足りなさを感じてしまうのも現実だ。
そんな特殊な理由があって、こうしたレビューになりました。
僕は映画ファンだが、映画にも描ききれないリアリティが厳然とあるのだと改めて感じてしまったところが、少し寂しかった…かな。
NHKの番組、私も見ました。彼女の気持ちが全くわからない訳ではないし本当に辛いんだと思う。ただ「でも…」人間がしていいことなのか、とも思う。難しい。