「映像作品としての完成度よりも商業的利益を優先したという印象」劇場版 呪術廻戦 0 アッパチーナさんの映画レビュー(感想・評価)
映像作品としての完成度よりも商業的利益を優先したという印象
初めて見る人に向けた作品紹介と、ファンには人気キャラの戦闘シーンサービスをメインに据えて映画をプロデュースしたのかなと思った。
このキャラの活躍に何秒分とか、制約あったのかなーと想像してしまった。
一冊分の話を2時間で上映するので、尺が間延びしてしまったことと、
他の人気キャラへの焦点が増えたことにより、折本里香の存在感が薄まってしまったように感じる。
テンポがよく常に折本里香を中心に据えていた原作漫画では、真希とフラグを立てるたびにハラハラし、傷付いた真希を里香が奪うシーンの迫力には気圧されたが、映画ではその嫉妬爆発シーンもサラッと流されてしまった。もしくは可愛く改変した? あのシーンの迫力があってこそその後の彼女の献身や「純情だよ」が映えたのに。
里香と乙骨のニコイチ感から始まり、乙骨が仲間を作って里香離れをしてからの二人で戦うクライマックスという原作の流れが希薄になっている。
後、宣戦布告のシーンは特にテンポの悪さが顕著だったように思う。あえて間を外すことで日常からズレたチグハグな不気味感を演出しようとしていたのかもしれないけれど。
間延びして薄まり、シーンシーンが里香に繋がり難い分、平和な中にある不穏さなどをもう少し強調しても良いのではないかと思った。
盛り上げの為に必要なフラストレーションが少なく、話の明暗のメリハリが欠如していると感じた。
全体的に緊迫感がなくサラッとしていて、不安や恐怖なく常に安心して見ていられた。悪い意味で。空気感の演出がぬるいのなあ?
暗喩的演出があまりなく、分かりやすくカッコいい大衆的作品という意味では良かったが、
流行りを過ぎたら見返してもらえないジャンク作品ではなく、単体の完成された映像作品として後世に残り得る映画を期待していただけに、少し残念に思う。
戦闘シーンだけがアニメーションではないと言いたい。
漫画の方が作品的完成度は遥かに上。