「「映画」に対する想いを、個人的な熱情を超えた奥行きで描いた一作」エンドロールのつづき yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
「映画」に対する想いを、個人的な熱情を超えた奥行きで描いた一作
映画監督が自らのキャリアの原点を振り返る作品は、もともと数多く作られてきたけど、『フェイブルマンズ』と同時期に本作が公開されたという偶然は興味深いです。
最初から最後まで、「映画」そのものだけでなく、映像芸術としての映画を築き上げてきた先達に対する敬意と愛情が全編に溢れた作品です。どの場面・挿話にも、パン・ナリ監督が影響を受けた監督の影響を入れ込んでいて、作中の少年(バビン・ラバリ)が本当にこの映画を作ったんだなー、と心動かされます。
キューブリックの影響は特に大きいようで、『フェイブルマンズ 』同様、この作品でも随所で光源を意図的に画面に入れ込む、プラクティカル・ライティングを用いた映像が随所に使われています。
貧困やカーストなど、インドの社会問題も物語に大きく影響してきますが、声高な告発調ではなく、少年たちが逆境の中でも映画に対する情熱を燃やし続ける姿に描写の焦点を絞り込んでいる点がとても印象的でした。
映画の光学的な原理を説明する場面は、『エンパイア・オブ・ライト』のある場面と奇妙に符合していますが、こちらの作品はユーモラスかつ皮肉が効いていて、あくまで物理現象として説明する『エンパイア』との対照性が面白いです。
まさにタイトル通り、エンドロールに到達した映画フィルムの行く先を通じて、時代が移り変わっても先達の魂は生き続けることを確信を持って提示した結末は非常に素晴らしいです。
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