「何かに夢中になったあの頃を追体験」エンドロールのつづき REXさんの映画レビュー(感想・評価)
何かに夢中になったあの頃を追体験
映写技師がフィルムを扱うときの手仕事と母親が弁当を作るときの手作業の暖かみが、後半の工場の無機質さと対比となり、より一層心の通ったものに感じさせる。
映写技師との交流、少年らのエピソードなど色々ちりばめられているのだが、編集が散漫なイメージは拭えない。
映画館に通っていたのはサマイだけだったのに、いつのまにか仲間も巻き込んでいて、その過程がみえにくい。
GALAXY座が閉館したのかと思いきや少年等が盗んだフィルムは別の映画館に配給される物だったし、父親のチャイ屋も立ち退き宣告されたが、まだ先のことであるのか、ラストまで営業している。
宝物が壊され別の物に変貌していく過程は少年の心に深い傷となる大事なエピソードだが、フィルムが腕輪となる場面が少し長いかな。それだったら仲間がGALAXY座にペンキを塗る場面などもう少し丁寧に描いて欲しかった。あそこはGALAXY座のリニューアル断念直後に挿入すればちょうど良かったのでは。
サマイが魅入られる光の描写、コノハズクやリスやライオン(生息してるの?)などインドの自然の美しさと対比して、カーストの格差と差別の闇も垣間見える。
今まではカーストが格差を生んでいたが、現代では英語が話せるのかどうかが格差を生むという現状も伝わった。
またインドの映画の役割が、宗教のプロパガンダのようなものが主流だったこともよくわかった。なるほど、踊りが多いのは盆踊りや祭りを映像化しているようなものと思えばいいのか。
監督がインタビューで語っていたが、現代は与えられるものが多すぎる。無からこそら、創造力がうまれるのでは、と。好きという情熱が、無から創造を生む。サマイを通して、忘れかけていた子供の時のキラキラを思い出させてくれました。ラストは泣ける。