「光と色の世界に魅了」エンドロールのつづき LSさんの映画レビュー(感想・評価)
光と色の世界に魅了
映画の歴史そのものへのオマージュをもって、映画が光と色と音と物語に分解され、再構成されたかのような印象だった。ピンホールカメラやシャッター、トーキーを発見していく様が楽しい。
フィルム映画の死と再生も興味深い。映写機はスクラップされ日用品に、フィルムは溶解されて安いプラ装飾品になる。…だがラスト!フォーマットは変わっても映画は生き続けるというメッセージと受け取った。(でもなぜスプーン?旧世代(チャイ売り)の象徴だろうか)
主人公はじめ子供たちの存在感が素晴らしい。父親、映写技師、教師…大人の演技もいい。ストーリーは複雑ではないが、インド社会の実情を描いてもいる(少し昔の話と思っていたが、デジタルシネマ導入で現代と知れた)。英語を学び、町を出よ。この言葉が切実に響いた。
特に色が鮮烈だった。フィルム映写独特のくすんだザラつき、幻想のような色ガラスの戯れ、インドの自然と町並み。父のチャイ小屋の色も素敵に見えた。
そして何よりも弁当!俯瞰で撮る食材の数々と調理する手の所作の美しさにほれぼれした。(「土を喰らう十二ヵ月」を思い出す。あれもベジタリアンだった)
>よしてさん
スプーンの意味、なるほどです。確かに、大量生産の象徴的な描かれ方であっても、どこか前向きな印象も受けたんですよね。
>knockさん
自分でもどう解釈すればよいか迷いながら言葉にしたので、ご賛同いただき嬉しいです。
インドでは素手で食事するのが普通でしたが、近年はスプーンを使う若者が増えているとか。その意味で映写機がスプーンに変わるのは新しい時代の象徴になっていると感じました。
ただ、古いものがなくなるのは寂しいですが、サマイが夢を叶える第一歩を踏み出したのも「時代の変化」なので、いい面悪い面両方あるのかな、と。
コメントありがとうございました! お褒めいただけるとうれしいです。
たしかにおっしゃるとおり、ちゃんと「語り手」「作り手」としての才能も豊かな少年ですよね。つい映画の差異性を強調しようとして、書き洩らしたかもしれません。個人のだらだらした感想をちゃんと読んでくださる方もいらっしゃると思うとありがたいかぎりです。僕もときどき拝読させていただきます!(無精でほとんど皆さんの感想をまわれておらずほんとすみません)