「一編のストーリとしては、物足りない。」クレッシェンド 音楽の架け橋 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
一編のストーリとしては、物足りない。
真実、融和は図られつつあるとで言えるのでしょうか。
もちろん、いわゆるパレスチナ問題について、もちろん評論子は詳しい知見を持っている訳でもないのですけれども。
たしかに、和平コンサートが中止に追い込まれたのは、いわば偶然のできごとによるもので、団員の不和・対立が直接の原因でなかったことは疑いのないことでしょう。
現に、帰国のための空港の待合室で、期せずして合奏することにもなっているわけですから。
個々人としては他にわだかまりを、例え抱えていたとしても、音楽人としては、には国境がなかったということでしょうか。
そして、本作の楽団のモデルとなった楽団は、現在も活動しているとのことですので、こういう芸術(音楽)の切り口からだとしても、究極には両国の融和が実現する日を期待しているのは、独り評論子だけではないことと思います。
ところで、本作のモデルとなっている楽団が今日(こんにち)でも活動しているということであれば、その楽団が現況に至るまでの、それなりの苦難というのが、エピソードというのか、そういうものが、何かしらはあったのではないでしょうか。
本作は、いわば「端緒」だけを描いて、その点を描くところは全く描いていないことは、評論子には、「片手落ち」というのか、「尻切れトンボ」というのか、そんな感慨を、どうしても拭うことができないのです。
映画作品としての観点から本作を振り返ると、一篇の「物語」としては、物足りなさを禁じ得ません。
そこのところがちゃんとが描かれてこその「クレッシェンド」(次第に強く)なのではないでしょうか。
そう考えると、ラストシーンでの透明な壁が、一見すると簡単に越えられそうなのに、かつて「東側諸国」と「西側諸国」とを完膚なきほどに隔てていた鉄のカーテンのように、越えることのできない現実を鋭く表現していただけに、余計に惜しまれます。
(否、鉄のカーテンとは違って、透明で、お互いが見えているだけに、余計に始末が悪い?)
本作は、評論子が入っている映画サークルで、2022年の年間ベストテンに選ばれた作品ということで補遺的に鑑賞した一本でしたけれども。
しかし、上記の点を差し引くと、佳作としての評価も難しく、残念ながら、良作の評価に甘んずるを得ない惜し一本になってしまいました。
評論子には。