「音楽は、いい!」クレッシェンド 音楽の架け橋 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽は、いい!
建国以来周囲のアラブ諸国から圧力をかけられ戦争になることも多いイスラエルと、そのイスラエルの中にあるほぼ占領されている国パレスチナという、憎しみあう両国の若者たちを集めて、管弦楽のコンサートが企画される。イスラエルはパレスチナを抑えつけ、パレスチナはテロでそれに抵抗する。そういうことが日常になっている両国の若者は、果たしてともに音楽を奏でられるだろうかという話。
当たり前だけど、うまくいきません。だって、お互いに身近な人たちが殺されたりした経験があったり、それはなくとも家族からことある毎にそういう話を聞かされているのだから。
皆を束ねるドイツ人指揮者は、ユダヤ人を大量殺戮した医者の息子。その事実は、生きている限り彼から離れることはない。
そんな彼が、自分の身の内を語り、みんなでスイスで練習キャンプを張り、あの手この手で取り組むけれど、わかりあうことはゆっくりとしか、本当にゆっくりとしか進まない。
そしてそんな中でたどり着いたコンサート前夜に起こった悲劇。別れの空港。そこで彼らが行ったことは…
パレスチナで音楽を練習するということの厳しさから始まる。催涙ガスが飛び交い、人のざわめきや怒号、サイレン、そして時には爆破音まで。そんな音に囲まれながらも、音楽家たちは、楽団のオーディションを目指して練習する。イスラエルに入る際の厳重かつ意地悪な入国検査。この検問シーンを見るだけでも価値があると思う。
ヴィヴァルディの「四季から、冬」。こんなにも、バイオリンソロと全体が響き合っている曲だと気付かないでいた。そしてラストの「ボレロ」。やっぱり音楽と映画は相性いいわ!
おまけ
モデルがある映画で、「ウェスト=イースタン・ディバン管弦楽団」という実在する楽団であり、その指揮者だということ。現実が持つ圧倒的な力。