「もっとシンプルでよかった」Mr.ノーバディ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
もっとシンプルでよかった
予告から、本当の強さを隠したしょぼくれ親父が、周囲から見下されていることに堪えかねて、ついに本領発揮の大暴れという展開を予想。週末の仕事帰りに観れば、スカッとストレス解消になるのではないかと思って鑑賞してきました。結果、まあ期待とは少々異なりましたが、それなりに楽しめました。
主演のボブ・オデンカークはよく存じ上げませんが、平穏な暮らしを求めつつも、ここぞという時には相手を容赦なく叩きつぶす非情さもつハッチ・マンセルを好演しています。ドク役で有名なクリストファー・ロイドも、久しぶりに見ましたが、味のある役どころで作品に華を添えていたと思います。
アクションシーンは、予告のような近接格闘よりは銃撃戦主体で、悪くはないですが、まあそれなりといったところです。終盤で用意された殺戮からくり屋敷は、劣化版ランボーという感じで、こちらもやはりそれなり。でも、カーチェイスシーンは、Pat BenatarのHeartbreakerとマッチしてゴキゲンで、本作いちばんのお気に入りです。他にも印象的なシーンはオールドナンバーに乗せて描かれ、なかなか楽しめました。
こんな感じで、部分的には悪くはないものの、総じてイマイチな印象が拭えません。その原因は、変にストーリーを作り込み過ぎたところにあるように思います。話はもっとシンプルに、というかむしろなくてもいいぐらいで、家族を守るというより「ストレス発散のために大暴れしました」といった感じで、オヤジの逆ギレを全面に押し出して描いたほうがよかったように思います。ただ、そう感じたのは、予告がそのようなミスリードを誘ったせいかもしれません。
もう一つ気になったのは、結局、ハッチは、父親は、助っ人は何者で、過去に何があったのかがイマイチはっきりしなかったところ。「それこそノーバディだ!」と言われればそれまでなのですが、やはりモヤります。これは続編制作への布石なのでしょうか。
というわけで、スカッとしたくて観に行ったものの、肩透かしを食らったために評価を少し下げてしまいましたが、先入観をもたずに鑑賞すれば、ストーリーもしっかり楽しめると思います。