「卓越したSTORY」先生、私の隣に座っていただけませんか? taka2x2さんの映画レビュー(感想・評価)
卓越したSTORY
この長いタイトルからは想像できない考え抜かれたSTORYがここにある。夫は有名な漫画家である。そして子弟関係のまま結婚した。だから夫に対しては今も先生なのである。しかし主人公、佐和子は編集者たちから先生と呼ばれている。彼女も今や漫画家として成功を収めている。オープニングの映像からは師弟関係で結婚しているとはまだ見えてこない。そして佐和子がスマホを取るところから展開する。佐和子の母が骨折したことからこの夫婦の田舎暮らしが始まる。ある時、夫が佐和子の新作の原稿を偶然見て驚愕する。昨日佐和子を教習所まで送った時の会話そのものと自身の不倫を見透かす強烈なメッセージが描かれていた。ここからこの漫画の原稿が果たしてFact or Fictionなのかわからないまま漫画の中と現実と2面で展開していく。滑稽なのは夫が翻弄され徐々に嫉妬していく姿である。この夫婦(黒木華・柄本佑)の会話での絶妙の間が素晴らしい。・・・・数秒、会話が途切れる。夫婦間には声に出さない心の言葉だけの会話がそこにある。W不倫? お互いが猜疑心を抱いたままコミカルに展開する。終盤、佐和子は「先生、私のとなりに座っていただけませんか?」とそれぞれシーンで2回言う。この先生は教習所の先生or 漫画の師匠、最後までミステリアスである。絶賛すべきは日本のホープ、黒木華・柄本佑の演技力だろう。そして卓越したSTORYは不倫という、こってりスープのような愛憎劇を朝食に出るサラダのように見事にあっさりと料理している。数年前、主人公の妄想をコミカルに描いたラブストーリ「逃げ恥」が新しい視点として一大ブームとなったが、私はこの作品にも新感覚のラブストーリーとして監督・脚本に5つ星をあげたい。