幸せの答え合わせのレビュー・感想・評価
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わがままで救われない妻を演じたベニング
アネット・ベニング×ビル・ナイ×ジョシュ・オコナー。
イギリス南部の海辺の町で暮らす熟年夫婦と独立して家を出た息子の物語。
始まって間もなく知る原題の意味。“Hope Gap”って近場にある美しい入江のことだったのですね。折に触れこの入江の美しい景観に救われた気がした。
そう、これは厳しい作品だった。
観るに辛い作品だった。
夫婦の間に在る埋めることができないギャップ。
“Hope Gap”の文字通りの意味を知る。
ベニングが演じたわがままな妻。
彼女を見ているのがホント辛かった。
無様な彼女を見たくなかった。
例えその後に新たな人生が始まるとしても。
I have been here before.
なんて嫌な女、なんだろ?
なんて不甲斐ない男、なんだろ?
国を超えて、熟年夫婦が抱える課題なのか。
いや、夫を殴るかな~
なんとも身につまされる映画。
長年連れ添っているからこそ、相手に苛立つし、何をやっても許されると勘違いしてしまうのかな?
それにしても、こんなに高慢な女がいる?
それでも、息子はちゃんと育ったね。
父を、母を尊敬してやまない。
子どもの頃の幸せだった記憶を、大切にしてる。
もっと早く決断してたら?
いや、今だからこそ息子が、2人の間で冷静に中立を保てたんだ。
人生にタラレバはないのかもしれない。
美しい詩を愛してやまない彼女が、汚い言葉で、嫌みなフレーズを止められない。
なんとも皮肉なコントラスト。
どの言葉にも、重みがあって、もう一度観たいと思いました。
彼女のように、ならないように、自戒を込めて(^_^;)
あるべき場所
モノすごく綺麗な風景、海、町並、セブンシスターズと言う白い岸壁に癒されたが、見終わった後には なんだかドッと疲れたー。
白い断崖の上に立つ妻グレースは、視線はいつも目前の青い海、いつの間にか夫は崖の下。下の夫を見てない。それぐらい二人の心の距離は離れてしまっている事に気付けてなく、息子ジェイミーは、白い断崖が見通せる場所にいて、二人を不安そうに見ていると言うイメージだった。
他者の意見を聞くふりをするけれど、最終的に自分の思い通りにしてしまう母親。我々人間には、暴力性と自分本位と言う原罪があると言う。それを体現したような母親役アネットベニング、さもありなん、さすが名優と言うべきなのだが、この家族関係は、どうなんだろう。
長い間 自分の思いや意見をはぐらかされたり無視されたり受け入れてもらえなかったりすると、自分の心が相手から離れてしまうもので、自分の言うべき言葉を飲み込んでしまうだろう。
親離れも子離れも出来ていない機能不全家族というべきなのか。
久しぶりに自宅に帰ってくる息子が、自分を奮い立たせる様にしていた最初のシーンで、母親をちょっと苦手としているのが分かる。なのに、いい子ぶっちゃっていて、共依存の様にも見えた。
共に29年過ごして来て、既にお互いを思いやる術を持てなくなった夫婦。そんな緊張感のある家から逃げたはずの息子も、ある意味ちょっと人との関係性の在り方に不安を持っているように描かれていた。
夫婦はお互いに、自分の空間を持つユルさが有れば良かったのになぁ、って言うより、初めから立ち位置が違っていたのかもしれないな。セブンシスターズの崖のようにあるべき所で生きるってことなのかな、と思った。
三者三様。家族神話に縛られない自分の人生の進め方。原題『HOPE GAP』が良い
母→パワフル、エネルギッシュ、明るい、お喋り、社交的…
父→内気、コミュ障、全てに受動的、自己主張をしない、争い事が苦手、妻にぶたれてもやり返さない、無口、非社交的
息子→ややシャイだけど、人の気持ちを想像出来る。優しい。
両親の良いところを受け継いでいるように見える…。
何故、こんなにもタイプが違う二人が29年も夫婦で居続けられたのかが疑問です。
夫婦って何だかんだ似た者同士が多いですよ。
息子が小さいうちは『良かった時代もある』と夫が語っていた。
確かに前半は妻が傲慢、ジコチュー、尊大な態度、口うるさい人に思えた。妻はあり余るエネルギーがあるのに、夫はまるで枯木のよう。
だが、そもそも夫の云うところの、『君とは違う種類の人間だと思う』
と。確かに私にもそう見える。
二人の共通点は子供だけ。
趣味のサークルに夫婦で入ってるわけでもない。
他人を巻き込んだ風通しの良い関係でもない。近所付き合いもない。
息子の云う通り、こんな風に夫婦関係に違和感を感じていたなら、何故もっと妻が若いうちに、せめて50歳位の時にハッキリ言わなかったのか?
これは夫の怠慢というか、単に勇気がなかっただけだと思う。
夫もまた自分のことしか考えていない。
もっと早く妻を自由にしてあげて、第2の人生を歩む選択肢を与えてあげてたら…。
あとこんなタイプの女性は専業主婦には向いていないような。
外でストレス発散したら良かったんじゃないかな?
仕事をするなり、早くにボランティア活動したり、女友達とお喋りしまくったりサークル入ったり。一人でできる趣味をいくつか見つけたり。
家に2人でいる時間が長すぎたのでは?全てを夫(他人)がカバーすることは出来ない。
そもそも30年近く連れ添ってる夫婦にまともな会話なんてないと思う。
なあんにもなくなる。
妻の云う通り、私も『アンジェラ』
は架空の人物かと思いきや…。
ベニングが2人の前で、元夫に泣き縋ったり、今妻を罵倒したりしなくてホッとした。
そこは元妻の『誇り』だけで何と持ちこたえた。
息子がこの作品のキーになっていた。
息子が親離れしてないんじゃなくて、親が子離れしてない。
父親も離婚の葛藤を息子に丸投げ。
『HOPE GAP』…訳の解らない邦題よりこの原題で良かったんじゃないか?
母さんが険しい道を先に歩いてくれれば僕も後から歩いていけると思う。
ラスト。
父と母が人生を先に歩むことが出来たら僕もその後を追うよ。
ハッピーエンディングではない。
私は3人が今後どう人生を進ませるのか、ハッキリしない不穏な感じの終わり方は、逆にリアリティーがあると思いました。
俺らこんな嫁やだぁ〜💦
「えぇ息子やなぁ」…この素晴らしき息子を育て上げ成長させた事がビル・ナイとアネット・ベニング扮する熟年夫婦最大の幸せの答えではないのかなぁ?
…正直、妻の言葉のDVに夫が不憫で気の毒で…
安らげる相手が出来ても責める事は…出来ない
いや、むしろそんな相手が現れて良かったとさえ思えた
個人的にもあそこまで夫に毒を吐ける妻に同情の余地は全く無い…
そこまで腹立だしい感情に吊り上げさせる大女優ベニング!流石です!
予告編で期待した盛り上がりは薄かったが、穏やかな海辺の町シーフォードの風情ある入り江を散策してる気分に浸れたのは儲けモノでしたね
この家族それぞれの未来と余生が心豊かである事を願います
息子の憤り
観ながらイラっと。
名優二人の演技力と存在感で、両親それぞれの葛藤を魅せてくれてはいるものの、正直、熟年離婚の理由や動機などありふれていて、さほど新鮮味はなく。
自己中な母親と、コミュ障の父親にイライラさせられつつも。
この映画の肝は、両親(特に母親)に翻弄される息子なのではないだろうか。
正直、別人格なんだから、子が親にしてやれることなんてない。
せいぜい母が抑うつ状態の時に自殺しないように付き添ってやるか、父からの伝言を母に渡すくらいか。
共感力があって、優しい性格から、両親の離婚を我が事のように思うのは仕方ないが、実のところ親離れで来てないおこちゃまな弱い心でしかないのではないかと。
この息子の態度に一番イライラしてしまいました。
「親はいいけど、息子はたまったもんじゃねーよ!」
「両親の嫌な部分ばかり受け継いで、自分の恋愛がうまくいかないよ!」
って監督の恨み節が炸裂していたようにも感じ。
人のせいにしてないで、経済だけでなく精神的にも自立しろよ、みたいな乾いた気持ちで劇場を後にしました。
移ろいゆく家族の光景
ほぼ会話劇といった感じで登場人物もほぼ家族3人のみ
役者の演技は良く、特にアネット・ベニングの演技が光り役に生命を与えている感じがした
こんな人物いそうと思わせる素晴らしい内容だと思う
ただ生き残る為に行軍する軍隊のように
残された人間(家族)のことなど考えずに前進する
正しいとも間違ってるとも言わずただそんなありようを提示している
別れる側と別れられた側それぞれの気持ちなどを伝えている
この奥さんは自己中でそうゆう所が旦那は我慢ならなかったんだろう
そうやって観ている自分もある地点で変化する
でも、愛情ある人間に突然見捨てられて
ヒステリックにならない人間がいるのだろうか?と
彼女の行動の半分にはそういった気持ちの裏返しも感じられる
結局、誰が正しいとかではない
この戦いは誰が正しいかなんて決められない
みんなの主張があるだけだ
そしてズレてしまった心はもう、戻らない事を知るのみである
人に語らず感じるもの
イギリス南部海辺の田舎町で暮らす結婚29年の夫婦の別離の話。
一人暮らしをする息子が久々に帰郷した日、自己主張が激しく強い信仰心を持つ妻に、物静かな教師の夫が、限界だと、1年から他に女がいると告げて家を出ていく。
荒ぶりつつも未練たらたらな妻と、もう微塵も振り返る気はない夫。
間に挟まれた息子の親離れがどうのとかも話にあがるけど大きな変化なし。
そして出て行かれた妻は…なんかまとめ方というか立ち上がり方が急過ぎない?
男脳と女脳がイメージと違ってぐちゃぐちゃした感じがユニークではあったけれど、これといってドラマチックな展開がある訳でもなくて自分にはハマらなかった。
恋愛映画が好きな人にはハマるのかな…男と女が逆だったら日本でもありがちな感じもするし、アンジェラが存在しなければ、とも思ったけれど、まあそれはそれで。
相手の幸せが自分の幸せに
妻グレースと夫エドワードが結婚29年目を迎える直前にエドワードから愛人がいる事を告げられ離婚を告げられる。社会人の息子ジェイミーを交えてこの離婚を3人で受け入れ前に進む物語である。
グレースはエドワードの事を愛してるのは伝わるが、その愛情表現を言葉や行動などで形にして表す事を幸せとする性格である。一方エドワードは作中内ではそういった表現を苦手とするタイプの様に静を好む。夫婦で死衝突が起きた場合も話し合い等からは逃げ時が解決する性格に見える。もちろん29年寄り添った夫婦の為どこかで変わった可能性もあるが、少なくともこの作品内ではこの点では2人は異なる性格、価値観である事が冒頭から伝わる。
その為グレースはぶつかると熱くなると言葉で相手を強く非難したり時には罵倒し手を出してしまう。
一方エドワードは攻撃を受けても堪えてその場から逃げてしまう。
この姿だけを見るとグレースが悪く見えてしまうが、作品が進むに連れてエドワードはなにかと問題と正面で向き合わない様にする姿が見受けられる。夫婦の問題でも息子ジェイミーに大切な事を任せたり当たり前の様に仲介役とさせたりエドワードの問題も作品が進むに連れてみえてくる。
そして離婚を告げる際は1年前から愛人がいてもうグレースとこれ以上いるのは無理だと一方的に告げ家を出てしまう。
当初はグレースは息子に協力を願いエドワードとやり直す事を試みるが時が経つに連れて現実を受け入れ最終的には離婚をのむ。
離婚となれば元夫となるエドワードの存在を憎むグレース。一方エドワードはグレースの存在を哀れに思い友達として今後は関係を続ける事を望む。
最後の最後まで2人の価値観が全く違う夫婦像を目にした。
この作品の面白いところは29年一緒にいた関係にもかかわらず真反対の価値観や考え方が作品が進むにつれて感じ取れるところだ。
夫婦といえど元は他人同士。とはいえここまで違っても29年は続く。良くも悪くもこの重みを非常に作品を通して実感する事ができる。
現実生活においてこういった夫婦のトラブルの中に入ってあれこれ言うのはとても難しい。
この作品だけを見てもどっちが良い悪いはない。どっちも良い面もあれば悪い面もある。離婚の選択においても正しい正しくないも分からない。
ただ一つ言える事は相手の幸せが自分の幸せに繋がってない事だ。互いに自分の幸せを追求してるが相手の幸せが自分の幸せになっていない。
夫婦に限らず人と人との関係において相手の幸せが自分の幸せに繋がる時こそその関係は信頼や強い友情愛情に
繋がるのではないかと実感させられるそんな作品であった。
もちろんその根本には相手を信頼し愛する事から始まるのであろう。逆に言うとエドワードの様にその根本が崩れてしまうと取り返しがつかなくなってしまう。
長年連れ添った夫婦といえど人間関係の脆さを改めて実感すると共に脆いからこそ大切に、そして丁寧に優しく接し合いそれが実った時は固い絆や愛が芽生えるのであろう。
人間関係の脆さと大切さを改めて考えさせてくれる作品であった。
4人目の主人公、hope gap
オープニング・エンディングを含め、あらゆるシーンで登場するイギリス南部の白亜の美しい海岸線、hope gap。有名なセブン・シスターズも途中に出てくる。
とにかくこの海岸線を含む街が息を呑む美しさ。これだけで映画の価値は数段上がる。恐らく息子の家はロンドンなんだろうけど、殆どのシーンがhope gapを内包するシーフォードの街なのもあの絶景を見れば納得。
勿論、アネットベニング、ビル・ナイ、ジョシュオコナーの3人の演技は白眉。特に、アネットベニングがかなり喋る役柄で、ビル・ナイとジョシュオコナーを困らせてるけど、それはそれで魅力だと後半に感じてくる多弁さがgood。
誰もが幸せになるような答え合わせは簡単ではない、というまさにhopeのgapを感じる余韻の残るラストが良かったです。
嫌いじゃないのに何で離婚するのだろうか…
夫婦で過ごしてきた時間軸『歴史』とその結果『思い出』と二人の間の『息子』というものがいて『幸せ』でありながらその先の『望み』を考えた時に離婚の選択肢を選ぶこともあるものなのですね。夫の防御的感受性と妻の攻撃的感受性の違いを変わっていく息子を通して捉えている点は興味深いです。
正直難しく、色々な考え方ができる映画でした。
どの登場人物から観るのかで感じ方が異なるのかなと…人は人と接することで自分の感情が出せるのかなと…
しかし、海に近く素晴らしく景色のいいところでした。
努力ではどうすることもできないもの
熟年離婚をテーマにしたドラマは、「妻が夫を捨てる」ケースが多い気がするが、本作はその逆。夫が妻に三行半を突き付ける。
劇中では明瞭にされていないが、著述業に携わっていたと思しきこの妻が只者ではない。ただでさえ寡黙で感情を露にすることのない夫を、信心深く、理論と屁理屈を交えて言いくるめるばかりか、一たび怒りに火が付けば手は出るし物に当たる。その感情の起伏の激しさを目にすれば、そりゃ夫の愛情が冷めるのも致し方ないかなと思える。
「円満な家庭や夫婦関係には努力が必要」と繰り返し言う妻だが、努力ではどうすることもできないものもある。
そんな夫婦の間で板挟みとなるのが一人息子だが、実は真の主役は彼。息子を通じて、家族として夫婦としての在り方を客観的に見つめる。
全体のルックからドラマから何から何まで地味だが、その分堅実な作りになっている。
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