劇場公開日 2021年6月4日

  • 予告編を見る

「ベニング、ナイ、風景、詩の数々・・・素材の味わいをじっくり活かした家族ドラマ」幸せの答え合わせ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ベニング、ナイ、風景、詩の数々・・・素材の味わいをじっくり活かした家族ドラマ

2021年6月7日
PCから投稿

これぞキャスティングの妙。30年間連れ添った夫婦役を演じるアネット・ベニングとビル・ナイが見事にハマっている。妻が「想いをきちんと言葉で伝えてほしい」と言えば、夫は「言わなくてもわかるだろ」と返す。夫の言葉をことごとく否定する妻。すっかり自信喪失しているようにも見える夫ーーー。それにしてもいきなり「出ていく」だなんて、彼の仕打ちは身勝手と取られても仕方ない。現実にはこんな問題を抱えつつ我慢して生きていくパターンが多いのかも。だが本作はあえて二人に別離の道を与えた上で、その先をどう歩むかを見つめようとする。舞台は英国南岸のシーフォード。太古より少しずつ波に削り取られた白い崖は結婚生活ですり減った心そのものだろうし、"Hope Gap"という地名も互いの価値観の違いを絶妙に象徴する。その情景を有名詩の数々がさらに深く彩り、まさに素材の良さを最大限に活かしたスープのような味わいに仕上がっている。

コメントする
牛津厚信