劇場公開日 2022年2月25日

「当事者しかわからないことを共感させてもらった」Ribbon chikuhouさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5当事者しかわからないことを共感させてもらった

2022年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

のんさんがこの世界で生きてきた過程を思うと、女優としてというより彼女の生き方を応援したくなる方ではあります  映画やテレビドラマへの出演が少なくなっているが、彼女は違う方向にも羽を広げていて、本作のような作り手となっても応援してくれる方は多いでしょう  2022年になって、大学の多くはZOOMなどの遠隔授業から対面授業にかなり切り替えられてきた  しかし実習とか、本作のような製作、また演奏など実技を伴うものは未だに制限が続いている
美術や音楽などを学ぶ学生が遠隔授業に馴染むはずはなく、こういった学生にはあまりにも残酷な学生生活となったであろう  リーマンショックの頃の大学生は就職氷河期と称され、非正規雇用しか選べない者も多く、40代となった今の彼らに「運が悪かった」とはとても言えない
このコロナ渦に学生生活を送った彼女たちも、「なぜ私だけ」という無念の思いを持ったであろうに、一方で大学は簡単に卒業をさせてくれ、大学生活を終わらせてくれている
のんさんの安定感は言うまでもないが、山下リオさんとのやりとりもとてもよかったです  十分大学生としての未熟さ、自己中心的な思い、同年代の娘を持つ自分からみて、よく描かれていたと思います  京都のミニシアター「京都シネマ」の隣に芸術学部を持つ京都精華大学のギャラリーがあって、現役の学生や卒業生が制作した作品を展示しています  自分のために作っている作品が展示され人々に観てもらう喜びがきっとあるでしょう  自己満足と揶揄されることもある芸術というものをどう考えるか、この非常時に考えた作品でありました
(5月19日 京都みなみ会館にて鑑賞)

chikuhou