「作り手の伝えたいことがちゃんと分かる良作です」Ribbon スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)
作り手の伝えたいことがちゃんと分かる良作です
のんは才能あるだろうな〜と思いつつも「まあ初作品だから黒歴史っぽいイタイ作品になるだろうな」とたかをくくっていましたが、予想外に良く出来ています。
卒業を迎える美大生。コロナ禍で卒業制作展が中止となり、自粛期間中の主人公のんのお話。思いのほか、ストーリーもしっかりしています。最後に親友の平井の作品とで、お部屋で卒展、という伏線回収の仕方なども見事ですね。
それよりも、これちゃんと「映画」になっている、という点に感心しました。何が「映画」か、っていうと、作り手であるのんが、伝えたいことが分かるな、と。モチーフはコロナですが、要は「観てもらえない、評価されない苦しさ」というクリエイターが持つ本源的なものがテーマになっている。
親友の平井は自粛中もコッソリ大学に忍び込んで作品を作っているが、観てもらえなければ意味がなく、最後はぶっ壊してでも持ち帰る。のんも自身の作品の最初の(多分、現時点では唯一の)ファンからの「カッコいい」の言葉があって、モチベーションがあがる。
平井がクリエイターの闇の部分。常に向上心を持ちつつも、一歩間違えればルールを犯してしまう。主人公は世間に折り合いを保ちながら創作するクリエイター、でもモチベの維持が難しい。田中のようなファンがほしいものの、距離感が掴めない。
主題のリボンは「想い」「感情」の象徴ですね。だから最初のシーンでリボンのお化けみたいな服を着て大学から出るのんが「重い〜、重い〜」って。卒制が出来ない美大生の想いが重いって、ダジャレですよね。それが色んな場面で効果的に登場する。
女優のんは、やっぱこの子はパッとした表情で場面を支配してしまう、根っから演者何でしょうね。普通のシーンやセリフ回しが上手いとは思えないけど、主役やるために役者になったような存在感を出せる子です。