劇場公開日 2022年2月25日

「自称・あーちすとに枠組みなんかない、創造を駆る独特なテイスト」Ribbon たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5自称・あーちすとに枠組みなんかない、創造を駆る独特なテイスト

2022年3月7日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

幸せ

作品そのものとしての完成度は決して高くはないとは思う。でも、見てきたことや感じたことを咀嚼しながら、芸術を題材にした映画として出来ていたと思う。そこに迷いもなく。

自称あーちすと。彼女の肩書きだ。女優としての活躍もあるし、音楽もする。そして今回、監督と脚本を務めた。その才能はやはりすごいと思うし、その中でもストレートな表現にスパイスが効いていて、分かりやすくも似て非なる作品に仕上がっていたと思う。自己満足感の強い作品とは違い、目指しているゴールに観客を連れてってくれる。だから、観ていて咀嚼しがいがある。

強いて言うなら、「あの頃な…」と言いたかった所。最初の緊急事態宣言からの葛藤を、美大生の視点から描く本作。それだけに、並々ならぬ感情を抱えているのは分かるのだが、他も一緒なわけで。なんとなく、笑い飛ばしたいシーンも笑いにくいのが悔しい。それでもそこはあーちすと。芸術家の視点と揺るがない芯による、思い切りのあるスイングが感じられる。今後も期待していいんじゃないかな。

のんさんと言えば、 その人脈の強さも1つ。岩井俊二さんが冒頭に登場し、特撮のクレジットには樋口真嗣さんの名前が入る。また、小野花梨さんや山下リオさん、渡辺大知さんといったキャストも魅力的。お金はかけられていないんだな…とは思うけど、凄く忠実で救いも感じられた。

まだまだ予断は許さない。けれど、分かったことが多いから、今なら少し動ける気がする。あの絶望とはもうオサラバ。「ゴミじゃない。」誰だって自分が分からなくなりそうだったあの時、抱いた感情は紛れもなく、今に生きる。清涼感もある、心地良い作品だった。

たいよーさん。