Ribbonのレビュー・感想・評価
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確かなビジョンが感じられる、「のん」の長編デビュー作
まだ能年玲奈と書きたい気持ちはあるが、がんばって「のん」と書こう。いずれにせよ、この人の表現力にはこれまでも瞠目させられてきたが、今回は長編初監督であり、脚本や編集も務めているという。いささか気恥ずかしくなってしまう部分もあるにはあるが、ひとつひとつのシーンに対して、ちゃんと時間をかけようという意思が感じられて、この監督には確かなビジョンがあるのだなと思わせられる。その点において、将来有望な新人監督の長編デビュー作として、ちゃんと日本映画の歴史の中で記憶されておいて欲しいと思う。そして親友役の山下リオは、思えば「あまちゃん」のGMT47仲間であり、こういう繋がりが信頼につながっていることも好感度高い。そして、そういう仲間の輪から飛び出した時に「のん」が何をやってくれるのかにも期待しています。
主演・脚本・監督「のん」による初の長編映画。出来は良いので、見られる機会のある人は是非見てほしい作品。
正直なところ「主演・脚本・監督のんによる初の長編映画」という設定時点で、やや地雷臭もしましたが、見ずに判断は良くないので期待を込め見てみました。 冒頭のサイレント的なシーンなど「あ〜やっぱり」というアート系のノリを感じました。そして背景説明のような描写が「Ribbon」というタイトルが出て消える14分間くらいまで続きます。 ただ、これ以降はどんどん面白くなっていくので、とりあえず14分間は失敗したと思っても辛抱してください。 14分後は主に部屋を中心として物語が本格的に始まっていき、素の「のん」であろう姿が描かれていきます。 ここからは不思議なほど心理を共有でき、主人公の機嫌の悪いと重く感じたり、機嫌の良い時はこちらも心地良かったりと、主人公にシンクロできていることに気付きます。心理描写に結構リアリティーがあるのです。 これは、のんが自らを曝け出すような渾身の演技で、監督を兼ねているためできた芸当のようにも思えます。 そして何と言ってもコロナ禍を描くと、どうしても作品は暗くなりがちですが、本作ではコミカルなやり取りも含め、全体としては明るいですし前向きでもあるのです。 さらには冒頭のシーンなども含めて、伏線的な要素として必要なシーンであることも分かります。 見終わって思うのは、これは新しい才能が開花した瞬間であろうということ。公開規模は小さいようですが、出来るだけ多くの人に見てもらいたい作品でした。 評点は難しいですが、「新人監督のデビュー作という視点であれば間違いなく満点」です。ただベテランなど全ての作品を含めると及第点ですが、次回作も期待したいほど十分なセンスを感じました。
ラストは間違いなく一見の価値あり
今になってみれば「エッ?」と思うコロナ関連の表現がたくさん出てくるが、そういえば当時はこれがリアルだったかもなぁと思い出した。ほんの数年前の出来事なのに、当時の空気感を忘れかけている自分に驚く。 例えば、「大学に忍びこんで、絵描いてた」という平井に対して、「バカじゃないの」と返すいつか。 「あんなに広い教室ならば、換気を十分にすればリスクは、ほぼないのになぁ」と、今の私たちだったらみてしまうが、確かにコロナ禍初期には、そうした知見すらまだなかった。 美大生なら一番に行うべき存在理由そのもののような行動を、同じ美大生が絶対悪として切り捨ててしまう切ないシーンだった。 まぁでも、描きたくてたまらない平井に対して、作品に手をつけようと思っても気力がわかない、いつかの気持ちもわかる。 締め切りがないといつまでも手が動かないことはよくある。それに、気持ちが充実してないと、行き詰まったその先の一筆を入れる元気も出ない。 それも、卒展が突然なくなり、持ち帰れない作品は処分させられて、自分自身が本当に必要とされているのかも曖昧になった中で、あえぎ苦しんでいればなおさらだろう。 だから、ポスターにも書かれている「ゴミじゃない」ことへの気づきが、クライマックスにつながっていく流れはとても良かったし、ラストシーンは後述するが、ビジュアル的な説得力もあった。 ちょっと点を低めにしたのは、親とのあれこれがちょっとステレオタイプで、まさかそういう言動には出ないだろうというところが気になってしまった部分と、平井といつかの当初の作品のレベルが明らかに低く、素材として利用される感が滲み出過ぎていたことによる。 「作品制作」は、頭の中のイメージを形や色にするものではなく、手を動かして形や色をいじる中で、頭の中のイメージを完成させる作業だと思っている。 だからこそ、一回壊されて再構成されたラストのインスタレーションは、圧倒的な力強さをたたえているのだし、これを観るだけでもこの映画を観る価値がある。 エンドロールのクレジットを見ると、かなりたくさんの方の手が入っているようだが、そういった人々の「念」(祈りと言い換えてもいいと思う)のようなものが滲み出たとてもよい作品に仕上がっていた。どこかのアートフェスで、あの部屋の再現とかがあったら観に行きたいレベル。 とにかく、一頃謎に干されてしまっていたのんが、活躍している姿はうれしい。
冒頭にあった自分の作品を壊さなきゃいけない学生たちのシーンには胸に...
冒頭にあった自分の作品を壊さなきゃいけない学生たちのシーンには胸に迫るものがあったけど、 のんの母親が毒親すぎるのと内定を取り消す電話口の話し声が機械音声すぎて変だった あんな謝れない母親いる?本筋と外れてめちゃくちゃ胸糞なのでどうにかしてほしい
☆☆☆★★ ほんの少しだけの感想で。 内容的には、若い頃の将来に対...
☆☆☆★★ ほんの少しだけの感想で。 内容的には、若い頃の将来に対する不安感であり。好きな異性との関係性の戸惑いと共に、相手との向き合い方が分からない悩み…と言った。以前からよくある話で、特に目新しさはないと言えます。 ただ、今までとほんの少し違うのが。コロナ禍に於ける情勢が、主人公であり、友人や社会に重くのしかかって来ている…辺りが、これまでとは違っているところでしようか。 女優のんの初長編監督作品ですが。あまり背伸びをせずに、等身大の女の子の話を持って来た辺りは悪くはなかったと思います。今後どこまでの題材でキャリアを磨いて行くのか?が注目でしょうか。 特撮には樋口真嗣。 正直に言って、特撮関連には少し疎いのであまり大きな意見は言えませんが、、、 (おそらく)ストップアニメーションと思われる箇所はとても良かったのですが。CG処理と思われる箇所は、ほんのすこしだけ蛇足感もチラホラ…と💧 2022年3月2日 テアトル新宿
デビュー作
女優のんではなく、監督のんという作品でした。
コロナ禍の中で色んなものが制限されてしまった美大生の何とも言えない姿を描いたものでした。
コロナというもの制限されてしまい、自分という存在を誰もが疑い、人と人の繋がりが軽薄になり、それでも自分でありたいという思いを描いたのかなと思いました。
女優のんは、とても悲しい姿もコミカルな姿も全てが自然体でとてもよかったです!
観る前と見た後では、この作品に対する考え方も変わりました。
芸術家にとってパンデミックは関係ない。
芸術家にとってパンデミックは関係ない。ましてや、形を残せる絵画等の芸術は、作品を創造できる時間が生まれるので、パンデミックは一切関係ない。『パンデミックで作品が残せない』は弁解でしかない。
映画はショートコントの寄せ集め。テーマを決めて、起承転結をはっきりさせるべきだ。評価できる出来ないはそれから。
我が亡父の一歳違いの弟が絵描きをやっていたのだが、僕がガキの頃、そのオジキと同居した事がある。そのオジキの為のアトリエがその家にはあって、そのオジキはそのアトリエを独り占めしていた。我が亡父が長男でその家の跡取りだったが、その一歳違いの弟がまだ独身でいたので、アトリエを親に(祖父に)作ってもらって、親の経済で貧乏絵かきを暫くの間続けていたのだ。さて、かわいそうなのは、なんの取り柄もない我が亡父とその配偶者の母。そして、僕だった。
さて、それは兎も角、アトリエは出入り禁止になっていた。しかし、大邸宅と言う訳でもないので、しばしば、遊び場を探して、そのアトリエへ忍び混んでいた。ある日、忍びこむと、デカいわけの分からない絵が飾ってあった。
ク◯ガキが忍び込んてやることと言えば、言うまでもなく1つだけ。しかも、その絵は上と下が分からない様な絵だ。
触った。
明らかに指紋位は残ったであろう。乾いていなかったのだ。さて、その後、どんな目にあったかは、実を言うとよく覚えていない。しかし、数日して我が亡父は跡取りの権利を放棄して、実家から出ることとなった。僕が絵を指で触って大事な作品を駄目にしたからだとは思えない。しかし、亡父は亡父になる迄、その理由に付いては話してはくれなかった。ただ『あんな絵は指で触ったくらいが丁度良い』って僕の告白を鼻で笑っていた。
かなりあとからそのオジキから聞いた話では、その絵で海外に留学出来たとか。
絵画芸術なんてそんな物と昔も今も思っている。でも、素晴らしいと思える絵は沢山ある。それは自分が素晴らしいと思えるからだと今では思っている。素晴らしいと思えないものは、残念ながら、僕にとっても素晴らしくない作品たのだ。
感染対策なんて矛盾だらけ(例えば満員電車、歯科医院を見てそう感じた...
感染対策なんて矛盾だらけ(例えば満員電車、歯科医院を見てそう感じたし、外食時も出入口だけマスクするとか適当だった。)の変な状況を具体的に映画で丁寧に表現したことは高い評価に値する。 戦時、戦後どうだったのか知りたくて映画を観る私は、今作が今後誰かに必要な映像になると思う。リアルであるかどうかも大事で、のん監督は『この世界の片隅に』で片淵素直監督と出会って学んでいるので安心だ。さかなクンの役も見事にこなした俳優としての実績もある。 新型コロナを恐れてマスクとか消毒とか普段とは違う状況なのに、その頃撮影されたドラマも映画も何事もなかったかのような作品が多い。 今作は変な時期の自粛に対する悔しさを爽やかなイメージで表現している。 リボンはモヤモヤを表現しているそうだ。徐々に減っていく。斬新なアイデアだと思う。 ついでに新型コロナについてひとこと。怖がらせる目的は、同意のもとで身体に(口からではなくダイレクトに)入れさせたいものがあったからなのである、というのが私の意見。
のんからのメッセージ
コロナ禍の下の美術大学・卒業制作展も中止となり、なんだか自分たちの活動がまったく無駄だったのかという徒労感・虚無感に放り込まれている大学生の話。 企画、制作、監督、脚本、編集、そして主演がのんさん。 観終わって思うことは、終盤にいいシーンが多かった。コロナ禍の下でとくに抑圧された生活を送っている学生へのメッセージ「みんな、やってることは無駄じゃないぞ。なんにもならなかった〇年間みたいに感じちゃいがちだけれど負けるな。やってきたことはゴミじゃないぞ。きっと意味があるぞ」が伝わってきた。「卒業制作の発表が中止になった美術大学生」という焦点の当て方はとてもよかった。 終盤の、主人公と田中とのシーンなんかは自分は大好き。ただ、中盤までは自分にはちょっと冗長な感じが否めなかった。 自分の注目はもうひとつ、特撮が「平成ガメラシリーズやシン・ゴジラ」 の特撮であまりにも有名な樋口監督! 飛び交うリボンの特撮、頑張ってくれたと感じます。舞い降り、降り積もるリボン=重たい。突き刺さってくるかのようなリボン=ほんとうはいまなんにも描いてない。自分自身が一本のリボンに。絡まっていくリボン=むかつく。この特撮のためだけに馳せ参じてくれたんだと感心。ただ、特撮はやはり「金」が重要なんだろうな、とも感じてしまった。 自分の結論はひとつ。のんさんをスクリーンで観ているのは幸せだ。 おまけ1 全編通して露出多めの映像が目立ったけれど、なにかの意味をもたせてるんでしょうか?映像に詳しい人がいたらなにか教えてもらえたら嬉しいな。(そりゃ、あんたの勘違いだでもけっこうです)あと録音レベルもばらついてたかな? おまけ2 え、岩井俊二監督、どこに出てたの? へえ、予告編は岩井俊二監督が編集したんだ。 そうか、「8日で死んだ怪獣の12日の物語」は岩井俊二監督、のんさん主演のひとりだったね。あの作品と比べるとまた面白い。「8日で死んだ...」と「Ribbon」の共通点はどんどん上がってくるな。レビューで「冗長な感じが否めなかった」と書いたことも共通点のひとつだ。ただ、必要だから冗長になってる気がしてくる。(どちらの映画も、自分には「記憶に残るが、高く評価した映画じゃない」という点は共通です)
当事者しかわからないことを共感させてもらった
のんさんがこの世界で生きてきた過程を思うと、女優としてというより彼女の生き方を応援したくなる方ではあります 映画やテレビドラマへの出演が少なくなっているが、彼女は違う方向にも羽を広げていて、本作のような作り手となっても応援してくれる方は多いでしょう 2022年になって、大学の多くはZOOMなどの遠隔授業から対面授業にかなり切り替えられてきた しかし実習とか、本作のような製作、また演奏など実技を伴うものは未だに制限が続いている 美術や音楽などを学ぶ学生が遠隔授業に馴染むはずはなく、こういった学生にはあまりにも残酷な学生生活となったであろう リーマンショックの頃の大学生は就職氷河期と称され、非正規雇用しか選べない者も多く、40代となった今の彼らに「運が悪かった」とはとても言えない このコロナ渦に学生生活を送った彼女たちも、「なぜ私だけ」という無念の思いを持ったであろうに、一方で大学は簡単に卒業をさせてくれ、大学生活を終わらせてくれている のんさんの安定感は言うまでもないが、山下リオさんとのやりとりもとてもよかったです 十分大学生としての未熟さ、自己中心的な思い、同年代の娘を持つ自分からみて、よく描かれていたと思います 京都のミニシアター「京都シネマ」の隣に芸術学部を持つ京都精華大学のギャラリーがあって、現役の学生や卒業生が制作した作品を展示しています 自分のために作っている作品が展示され人々に観てもらう喜びがきっとあるでしょう 自己満足と揶揄されることもある芸術というものをどう考えるか、この非常時に考えた作品でありました (5月19日 京都みなみ会館にて鑑賞)
コロナ禍を生きる人たちへの素敵なエール。
作り手からのまっすぐなエールが伝わった気がして、エンドロールで流れるサンボマスターを聴きながら泣きそうになってしまった…。
この作品にサンボマスターの主題歌はずるいでしょ。
泣く。
冒頭、主人公の友人・美大生の平井がつぶやいた言葉「私が作ってきたものがゴミみたいになっちゃった感じ」(うろ覚えだけどこんな内容)。
この言葉に対するこの作品のアンサーでありメッセージが「ゴミじゃない」なのだ。
新型コロナウイルス禍でたくさんの人の活動や行動の根幹が揺らいだのを感じた。
音楽フェスなどイベント開催のために長いスパンで準備・調整を重ねてきた人。
同じく試合のために練習や調整を重ねてきたスポーツ選手たち。
舞台や演奏会などの公演のために稽古を重ねてきた俳優やスタッフたち。
展示会のために作品を作ってきた芸術家たち。
外食業に携わってきた人たち。
ライフライン関連以外の社会活動が自粛・中止を求められた新型コロナウイルス蔓延初期の頃。
本作の主人公・いつかや友人・平井のようにこういった方々は「自分たちのやってきたことは何だったんだろう」という無力感を少なからず感じていたんじゃないかと思う。
そんな人たちに向けた「あなたのしてきたことは無駄じゃないよ(=ごみじゃない)」というメッセージ。
自身も芸能活動やアート活動を展開し、またそれに携わる人たちに関わってきたのんちゃんだからこそ、この作品を作りたいと思ったのだろうなと思う。
そしてその想いは最初からラストまでぶれることなく作品にこめられていたように感じた。
そこがとても、良かった。
それだけでなく本作は新型コロナウイルス禍のドキュメントとしても見れそうだなと思った。
専門知識を持たない大衆は何がどうなっているのかわからぬまま、外出自粛を求められ、対面で人を会うことへも自粛を求められ、自宅の中で戸惑い、いつ戻るのかすらわからない、奪われた日常へのモヤモヤを抱えながら過ごした。
いつかが自宅で過ごすシーンを見ながら、私自身も感じていた当時の空気や戸惑いが蘇って、なんともいえない気持ちになった。
家族と会うにも距離を取り、また同じ家族でもウイルスに対する想いや姿勢もバラバラ(いつかと妹・まいのように)。誰かを出迎える時は毎回マスクをつけ、久しぶりに再開した同級生もマスクで顔が隠れているから本人なのか確信が持てない。
こんな日常の細かいシーンがコロナ禍を経験した私たちにはとてもリアルだった。
そう、リアルと言えば、いつかと妹・まいの会話や空気感。2人が家で過ごしたり、豚肉の生姜焼き食べたり、帰り際のやり取りがリアルで2人のシーンは印象的だったな。
あといつかと平井が学校にしのびこんで平井の作品を壊して持ち帰るシーンも良かった。
平井の作品がいつかの作品と一緒に「卒業制作展」に並んだのもじーんときた。
少ない登場人物、限られた生活圏で起こったドラマながら良い作品だったな…。
いやみのないさくひん
2020年にどこかの美大の学生が窮状をコマ漫画にしたものを見た。 あこがれて、べんきょうして、ついに美大にはいった──のに、新学期がはじまってから(新型コロナウィルスの影響で)いちども登校したことがない。 通信授業で履修やパソコンの設定に追われた。通学してないのに学費は満額。キャンパスライフがないからともだちができない。相談する相手もいない。 じょうずな漫画で訴求力があり多数の共感(いいね)を集めた。 おそらく見た方もすくなくないだろう。 この映画Ribbonはそんな美大生の失意と不安をくみあげている。 時事に寄せ、とても心やさしい映画だと思う。 ただし基本的に創作において新型コロナウィルスをモチーフにするのはアンフェアだ。(と思う。) なぜなら新型コロナウィルスはこの惑星のほとんどの住人が被っていることだから。 全員が被っていることを「たいへんなんです」と言うのは、言いたいなら言えばいいが、普通は言わない。 まして創作物ならどうだろう。 変化球にするか副次物にするか、すくなくともそれが原因でこうなった──の根幹要因にはしない。 被害が局地なら、それを報告したり窮状をうったえるのは有りだが、全員なら「たいへんなんです」と言ってしまうと不遜──になってしまう。 畢竟じぶんだけがトクベツだと思っていなければ、新型コロナウィルスを題材にはしない。普通は。 ただしおちをつけなんせにも感じたが、のんは多分「おそろしく無邪気」なひとだと思う。じぶんの身の回りで起こっていることを、とくに深く考えることなく主題としたにちがいない。映画にもその無邪気があふれている。 よしんばじぶんだけがトクベツと思っていたにしても、じっさいにのんはトクベツな女優だ──とも思う。こんなひとはふたりといない。 そんな無邪気と悪意のない優越があらわれている映画で、力も技量もないが、いやみがなかった。 のんがつくりのんが演じているとぜんぜんつまんないのは置いてもまったくいやみがない。ふしぎなひとだ。 日本映画にはいやみを感じることがおおい。よって日本映画であるなら「いやみがない」はポイントを加算できる。 じっさい、これを見た人のほとんどが映画のクオリティについては酌量/容赦しているであろう──という世評になっていた。 そんな人を魅了させるカリスマがのんにはあると思った。
お母さん、粗大ゴミは連絡してから捨てないと回収されませんよ!
一時期SNSで入学したての美大生がコロナの影響で授業は全てオンライン、せっかく上京したのに大学の友達もできず、高い学費を出してまで入学したのに何をしているんだろうという投稿が話題になったが、本作は卒業間近の美大生が卒業制作の完成間際でコロナの流行により校内立ち入り禁止、卒業制作展も中止になってしまうというお話。 さすが女優ののんさん、自分の見せ方を分かっていらっしゃる!と感心するくらい場面場面の画の力がすごい。と思うと同時に、こういう画が撮りたかったんだろうな、こういう画にするためにここで必要以上にこの要素を強調したんだろうなという無理矢理感が何となく伝わってきてしまうのが観ていて心地が悪いなと感じる原因になってしまっている気がする… 特に本作はコロナの流行の影響で人と今まで通りに関わることができないということが強調されており、ソーシャルディスタンスやアルコール消毒等が“過度“に強調されているが、外で手を洗わないでメロンパンを食べたり、外着のままベッドに横たわったり等、潔癖気味の人間からしたらゾッとするようなことを平気でやってのけてしまう。 卒業制作も大きなキャンパスだから持って帰れないというのはコロナ関係なく最初から分かっていたであろうし、4年間色々な創作活動をしてきたのであろうから、卒業制作展が中止になったから4年間全て無駄だというのはちょっと無理矢理過ぎかなと感じてしまう… でも、やはりメインの女優2人のパワーがとにかくすごい!2人ともビジュアルが強いというのもあるが、人を惹きつける魅力がとにかくある。ストーリー的にイライラさせられる場面もあるが、最終的にはいいもの観せてもらったなと思える。 特撮のリボンの動きも「空気人形」という映画をふと思い出してしまうくらい雰囲気があって良かった。しかし、主人公のリボンに対する思い入れ等が描かれていないので、自画像にリボンを組み合わせることについての意味合いがあまり伝わってこず、リボンをリボン結びのまま貼り付けるというのは、お母様の言う通り美大生にしては幼稚な作品に観えてしまうので、そこら辺はもっと掘り下げて欲しかったかなぁ。
のんの切り出したばかりの原石をしっかり見せてもらいました。
個人評価:3.5 青さを青いまましっかりと保管している。大人になってからでは描けない、今この歳でしか描けないもの。それを映像にできていると感じる。 またこのコロナ渦で起きた若者達の思いを、若者の誰かがそれを代表して映像に残さないといけない。その役割も担っている。 のんの切り出したばかりの原石をしっかり見せてもらいました。
【コロナ禍に直面した芸術、及び多くの職種の人々の危機に対し、のんさんが”再生(Reborn)"の願いを込めて描いた作品。コロナ禍を真正面から捉えた真摯な作品でもある。】
ー コロナ禍を今作程、真正面から捉えた作品は、記憶にない。 資料によると、のんさん(本当は能年玲奈さんと書きたい・・。)がこの作品の脚本作りを始めたきっかけはご自身が主催する音楽フェスが開催直前に中止になってしまった事だそうである。 思い返せば、2年前、正体不明のウイルスが一気に蔓延し、映画館は閉鎖。映画製作も中断。芸術活動(音楽、演劇・・)も全て中断。 飲食業も、閉店を余儀なくされ、閉塞感が世界を覆った。 だが、のんさんは”卒業制作展が無くなり、集大成がごみのように感じる”・・、という美大生の記事をネットで読み、衝撃を受けつつも、 ”悔しくてモヤモヤする負の感情をリボンで結び、包めばまた形を作れる” と前向きに捉え、タイトルにし、今作を制作した。 素直に立派な方だと思う。 ◆感想<Caution! 少し内容に触れています。> ・美大生のいつか(のん)の両親と妹(菅原大吉さん、春木みさよさん、小野花梨さん)の明るいキャラクターが、重いテーマを取り扱ったこの物語に、笑いと軽みを与えている。 ー ソーシャルディスタンスを保つために刺股を持ったお父さんが現れたり、謎の黒装束の妹の姿。クスクス笑える。- ・そんな日々の中、いつかにも内定取り消しの電話が来たり・・。 - 当時は、厳しい事が今以上に多かった。- ・けれど、彼女が絵に夢中になったきっかけとなった中学生時代の田中君(渡辺大知)との公園での出会いや、その後のやり取りなど、何だか良いのだなあ。 - プリンを上げるも、スプーンが無かったり・・。ちょっとしたことなのだが、のんさんの脚本は良い。- ・親友の平井(山下リオ:あまちゃんで一緒だったなあ・・。)との遣り取りも、どこかおかしくて、切ない。 - ”絵を描くために学校に入るのが、何で悪いの!”ごもっともである。で、二人で実行した事。- <重いテーマ(で、現在も続いている・・。)を正面から扱った、のんさんが”再生(Reborn)"の願いを込めて描いた作品。 どこか、ほんわりとしていて、透明感ある映像が綺麗で、素敵だなあと思いながらも、 ”コロナなんかには負けない!” と言うのんさんの強いメッセージが伝わって来た作品でもある。>
これからの期待と応援をこめて
初の監督作品とのことで、粗削りな部分はあると思いますが、描きたいことを丁寧に作ろうという気持ちが伝わってきて良かったと思います。
価値観の相違から親心で何気なく作品を捨ててしまう母親とか、除菌しまくり&完全防備な妹とか、人によっては理解できないかもしれませんが、私的にはめちゃくちゃわかります。あるあるです。
ただなぜ数ある美術作品の中で『リボン』をテーマに選んだのか(根本の映画のテーマとの繋がりは何だったのか)はあまりよくわかりませんでした。(すみません)
最近は映画業界の闇について色々ニュースになったりもしていますが、のんさんにはこれからもご自分が伝えたいこと、撮りたいものを純粋に見つめて形にしていっていただきたいです。
のんちゃん流、社会と芸術の向き合い方
感染症が蔓延し、人々が自分のことで手一杯なときに芸術はどう扱われるのか。
感染症の初期にはクリエーターたちが社会に翻弄されていたのは記憶に新しい。
「芸術はゴミ」なのか?
感染せずに生命さえ維持できればそれでいいのか?
表現者の葛藤が、リボンの形を借りて、画面に表現されていると感じた。
監督も脚本も主演も編集もやっているのならば、これはすごいことと思う。
より沢山の作品を生み出していってほしい。
もうちょっと話題になって欲しい。
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