「ありがちだけれどありがちじゃない」ラブ&モンスターズ 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
ありがちだけれどありがちじゃない
小惑星によって生物が巨大化した地球では、運よく巨大生物に食べられないで生き残った人間たちが、各々コロニーに隠れ、暮らしている。よくある設定だ。そして、主人公は小心者の青年、 ジョエルで、彼は他のコロニーに住まう恋人のエイミーに会うため、危険がいっぱいの外に飛び出してサバイバルに挑戦する。それもまたありがちだし、旅の過程で同じく孤独な日々を送っていた犬のボーイとバディになる設定も想定内だ。だが、ボーイがことのほか上手に調教されていて人間並みの演技を披露したり(ここポイントです)、ジョエルが遭遇する巨大ヒキガエル、巨大ムカデ、巨大アリたちのビジュアルが、確信犯的に古臭く懐かしかったり、やがて、苦難の果てにエイミーと再会したジョエルを待ち受けていた"大人の洗礼"が妙に痛々しかったり、人との出会いと別れを繰り返していくジョエルを介して、人生という旅の切なさと尊さが胸を締め付けたり、等々。要は、見た目よりも奥深いSFサバイバル&ラブ&アドベンチャーなのだった。コロナがなければ去年の春に劇場公開されるはずだった本作。映画ファンの目に触れるのに時間がかかったけれど、面白い映画はそんな不運も跳ね返す。そんなことを感じて妙に楽しい気分になっている。
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