「B級“愛とモンスター”映画ではあるけれど、ただそれだけでは終わらない!」ラブ&モンスターズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
B級“愛とモンスター”映画ではあるけれど、ただそれだけでは終わらない!
本年度アカデミー賞視覚効果賞ノミネート作品。
…って、それまで全く知らなかった。アメリカではコロナ渦の昨秋にひっそりと公開。一応全米興行ランキングはチェックしてたけど、記憶ナシ。(後で調べてみたら、ちゃんと初登場9位)
日本ではつい最近Netflixで配信されたばかり。内容も気軽に見れて面白そうだし、何よりこのタイトル!
“愛と怪物”!
モンスター映画好きとしてはユニークなタイトルに惹かれ、見てみた。
小惑星が地球に接近。人類はミサイルで撃破に成功するも、化学物質が地球に降り注ぐ。
それによって、地球上の生物が突然変異。巨大凶暴化し、人間に襲い掛かる。
あっという間に世界は滅び、人類の95%も死滅し…。
生き残った人類は地下のコロニーで隠れるようにして暮らしていた。
主人公の青年ジョエル。目の前でモンスターに両親を殺され、恋人エイミーと離れ離れになって、7年。
ある日7年ぶりに無線でエイミーと連絡が取れた。
そしたら、居ても立ってもいられなくなった。
ジョエルは地下から外の世界へ。
エイミーに会いたい一心で、モンスターたちが徘徊する中を、危険な旅に出る…!
B級モンスター映画×YA終末映画のよくあるパターン。
設定や話的には新鮮味は無いだろう。
でもその分、しっかりとツボ抑え。
モンスター映画好きとしては、出し惜しみなくモンスターを見せてくれるのが嬉しい。
しょっぱなから巨大アリ、旅立って早々巨大ガエル(ちなみに私はカエルが大嫌いなので卒倒してしまうだろう)、巨大ムカデ、巨大ヘビみたいな?トカゲみたいな? クモンガ…じゃなくて、巨大クモみたいなのも。クライマックスは、身の丈10mはある巨大ガニ!
昆虫、両生類、爬虫類、甲殻類、様々な生物をモチーフに。
デザインもかなり不気味。
さあ、B級映画好き、モンスター映画好きは集まれ~!
設定や主人公の状況はスリリングそうではあるが、作品自体は非常に娯楽作。
例えるなら…と言うか、誰もが必ず『ゾンビランド』を彷彿する。主人公の軽快なナレーション、ユーモア、あんなノリ。
そう、つまり、主人公のジョエルくん、彼女に会いに行く!…と息巻くものの、臆病なもやしっ子。今居るコロニーの仲間にからかわれる事が多く、自分は果たして役に立っているのか…? 勢いで旅立ったようなもの。
道中、ウディ・ハレルソンではないけれど、こちらではマイケル・ルーカー演じるタフなサバイバーとその相棒の少女と出会い、サバイバルの術を教わる。
様々な生物がモンスター化した世界でも、犬は人間の相棒。“ボーイ”という名の賢い犬と出会い、長旅を続ける。とにかく、このワンちゃんが最高~! もう今年のBEST助演ワン優賞決定なくらい。
AIロボットとも出会う。
旅は本当に、出会いと別れ…。
モンスターに襲われ、窮地に。
そこを救ったのが、エイミーと仲間たち。遂に辿り着いたのだ。
…しかし、喜びも束の間。
エイミーたちは今居る場を旅立とうとしていた。
ジョエルが来る直前、船でやって来た一団が居て、安全な新天地へ一緒に乗せて貰う事になっていた。
リーダーはモンスターたちとも闘ってきた頼りになる男。
さらにジョエルにはショックな事が…。
2人が離れて7年は長過ぎた。
ジョエルは一途にエイミーを想っていたが、エイミーの方はその間…。
悩みながらもジョエルは、一緒に船に乗せて貰う事を選択する。
せめて最後に、コロニーの仲間に別れの挨拶を。
その時、初めて気付いた。地図に皆から激励や別れを惜しむ言葉が。
無線が繋がり、久し振りの会話を懐かしむ。
突然無線が切れた。再びモンスターに襲撃されたのか…?
ジョエルは決心を変えた。
帰る。コロニーの仲間の元に。
その時、もう一つ気付いた事が。リーダーの男に不審な点が…。
この手のジャンルでモンスターよりもっと恐ろしいのは、言うまでもない。
目的は食料や物資強奪。安全な場所へ連れてってくれるなんて真っ赤な嘘。
さらには信じた人々を口封じ。
鎖と電気ショックで従わせたモンスターを使って。
“モンスター”という名のクズゲスな人間をやっつけろ!
ヘタレだった主人公の活躍が痛快。
悪党どもの皮肉な最期も痛快。
“ラブ”の方はちょっと切ないけれど…
“モンスター”への愛は実はたっぷり。恐怖や脅威の対象ばかりじゃない。共存や微かな希望さえ感じさせる。
主人公の成長物語としても、サバイバル・アドベンチャーとしても、ラブ&モンスター映画としても、上々!
面白楽しく、ハートフルでもある。
アメリカでは昨秋、日本では今、コロナ渦に公開/配信された事も作品の娯楽性やメッセージ性の意義あり。
見れて良かった。