ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償のレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
「ローザ・ルクセンブルク」と「フレッド・ハンプトン」を我が高校時代の世界史の教師が
「革命を成し遂げようとして、●●●●によって目前で消された無念の人」と教えてくた。
現在、僕は、こう言った出来事があった事すら忘れて怠惰な生活をしている。そして、ご当地のアメリカは、フレッド・ハンプトン氏が演説した「アメリカに於ける社会主義」等欠片もない。
しかし
演説や彼の行動を見る限り、些かアナクロではあるが、彼はテロリストとは違うと理解できるだろう。
そして
映画の最後にフレッド・ハンプトン氏の意志がまだ繋がっている事を知る。
マルコムXやキング牧師のあとに起きた出来事で、前述の様に高校2年になるまで、僕は、はっきりと知らなかった。知っていたのはアメリカの社会主義は「毛沢東語録」を持つ事が「流行っている」と教え込まれて来た。高校生になった頃、毛沢東語録を買いに神保町へ行った事を思い出した。
だがしかし、残念な事だが、その革命もとんでもない革命と知る事になる。
さて、繋がれたフレッド・ハンプトン氏の意志は花を咲く事があるのだろうか。
結論を付けるとすれば、現在のままでは無理だと思う。然らば如何に?
この映画はそれを象徴していると感じた。
フレッドハンプトン氏の意志を極ありふれた様相のデボラさんが次いでいる。つまり、詩人で女性のデボラさんが次いでいるのだ。だから、女性の台頭を暗示している様に感じた。勿論、制服を来た女性の台頭を望んでいるのでは無い。普通でも女性の女性としての意識の向上が望まれる。と言う事である。
そんな風にこの映画は締めくくっている様に思えた。だから、「ローザ、ルクセンブルク」なのである。
女性に対する差別や性差を嘆いているのでは無い、勿論、女性は女性らしくでは無い。女性がイニシアチブを取ってもらいたいって事である。
具体的に言えば、女性がイニシアチブを取った「革命」が起きないかなぁって事である。
辛い人生
ビルは仕方なくFBIの飼い犬になった。
最初は全く興味がなかった革命運動の中心に近づいていった。
だんだんと共感していくが飼い犬は飼い犬。申し訳なくおもいながらも密告して裏切る。
仲間が次々に死んでいっても飼い犬からは抜けられない。
とうとう議長暗殺にまで手を貸してしまう
それなのに誰にも気づかれない
心の底では誰かに気づいて殺して欲しかったのかもしれない。
彼もまた犠牲者なのか…
物凄く胸糞悪い。。片や99発の発砲で、片や1発のみ。寝込みを無差別に襲ったのだから当然。これが国家権力のすることなのだろうか。ブラックパンサー側の犯罪などはあまり描いていないがこれはれっきとした殺人だ。しかもフレッドはまだ21歳の若さだったとは。殺してまでFBIが恐れるほど、彼の群衆を動かすカリスマ性は強大で脅威だったのだろう。内通者ビルがその後も裏切り続けたことが胸糞悪いが彼もまたFBIに脅され、自殺するまでになった犠牲者だったのか。やはり憎しみは負の連鎖しか生み出さない。ラスト10分で一気に感情を揺さぶられ、何とも言えない気持ちにさせる。
Mama, take this badge off of me…。 ユダは銀貨30枚と引き換えにイリノイのイエスを売れるか?
FBIによりフレッド・ハンプトン率いるブラックパンサー党へと送り込まれた内通者、ビル・オニールの葛藤を描いた、実話を基にしたポリティカル・サスペンス。
第93回 アカデミー賞において、歌曲賞と助演男優賞(ダニエル・カルーヤ)を受賞❗️
第78回 ゴールデン・グローブ賞において、助演男優賞を受賞!
第26回 放送映画批評家協会賞において、助演男優賞を受賞!
第74回 英国アカデミー賞において、助演男優賞を受賞!
2020年度の賞レースを大いに賑わせた作品でありながら、日本ではビデオスルーという扱いを受ける不遇の作品。
「ブラックパンサー党」とか「公民権運動」とか、日本だと馴染みのない世界の物語ではあるが、作品自体はかなりストレートなエンタメ作品であり、ぼんやりとした歴史感覚さえあれば日本人でも普通に楽しめる映画だと思う。
この作品を端的に言ってしまえば、ブラック版『グッドフェローズ』。
実話を基にしているという点や物語の顛末など、かなり『グッドフェローズ』に近いものがあるし、作品全体のトーンも似ている。
多分『グッドフェローズ』が本作の下敷きになっているんだろう。
FBIとブラックパンサー党の抗争はほとんどギャング映画の世界。
これに、かの有名なイスカリオテのユダによる裏切りという要素をブレンドすれば本作の出来上がりである。
黒人たちが直面する苦境の原因は資本主義というシステムにあると考えるブラックパンサー党は、それに対抗するために社会主義を標榜し、貧しき民衆を人種という垣根を超えて結集させることで革命をなし遂げようとしている。
その中心にいるのが、圧倒的な演説力を持つ若きカリスマ、フレッド・トンプソン。
彼の力により、白人中心の組織ヤングパトリオットや、プエルトリコ系中心の組織ヤングローズ、反目する黒人組織クラウンズなどが集結し「虹の連合」が結成される。
日に日に影響力を増してゆくフレッドを恐れたのが、あの悪名高い初代FBI長官フーヴァー。
容赦のない攻撃でブラックパンサー党を締め付け、ついにはフレッドの暗殺計画を企てる。
ブラックパンサー党とFBI、二つの組織の板挟みに合うのが本作の主人公ビル・オニール。
ヤクザに借りを作ると後が怖い、とはよく言いますが、FBIに借りを作ってしまうともはや待っているのは地獄への片道切符。
どんどん精神的に追い詰められていくビルの姿には、自業自得とは言え同情せずにはいられません。
ただ、ビルの描き込みが不足しているように感じてしまうのが本作の弱点。
ビルとフレッドの距離が縮まる過程を、ほぼ丸々すっ飛ばしてしまっており、ビルがどうやって党の幹部みたいな立場にまでのしあがったのかがよくわからない。
また、ビルがフレッドの魅力に惹きつけられている、という描写が薄いため、彼の葛藤がただ自分の保身のために出てくるものなのか、それとも友を裏切ることへの良心の呵責なのかが、いまいちわかりづらい。
どうせなら、どっちかに振り切って欲しかった。
ビルの背後にいるFBI捜査官ロイ・ミッチェル。
彼はブラックパンサー党を危険だと信じ込んでいるが、同時にKKKについても批判的な見解を持っている、本作の中に出てくる警官の中では比較的リベラルで良識的な人間として描かれている。
彼の葛藤も本作の一つの重要なファクターになり得たと思うのだが、そこはちょこっとだけ触れるのみ。
そのため、いまいちロイというキャラクター像が掴みにくかった。
各賞レースで助演男優賞を獲得しまくった、フレッド・トンプソンを演じたダニエル・カルーヤの名演は見事👏✨
「ナメクジに塩を売ることだって出来る」と評される彼の演説はまるで炎のように情熱的、かつ知的。あんな演説を聞けばブラックパンサー党に入党したくなるわ。
フレッド・トンプソンとビル・オニールについて、本作を観るまで全く知らなかったし、ブラックパンサー党についてもMCUの『ブラックパンサー』の元ネタであることしか知らなかったため、凄く勉強になる一作だった(余談だが『ブラックパンサー』の監督、ライアン・クーグラーは本作の製作に携わっていたりする)。
ジョン・レノンが「毛沢東の写真をポッケに入れているような奴が、革命なんて起こせる訳ねーだろ」と歌っていたことの意味がわかった。
トンプソンは暗殺、ビルはユダと同じように自殺という道を辿る。革命には血が伴うのが常とはいえ、全く救われない物語だわな…。
BLMについての理解が深まること間違いなしの一本。
ブラックパンサー党の理念やビルやフレッドの一生について学び考えることは、我々日本人にとっても有益なことに違いないし、何より普通にギャング映画として面白いので、多くの人に観てほしい隠れた(というより隠された)良作。
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