「傍観者に告ぐ」ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償 Kjさんの映画レビュー(感想・評価)
傍観者に告ぐ
ツールが必要と喚くフレッド。立ち去る聴衆。冒頭のシーンはブラックパンサーに対する我々の先入観に応えている。しかし、教えを説きRainbow Coalitionを構築するにつれ、ビルと共に心が寄せられる。ダニエル・カルーヤによって吹き込まれるフレッド復帰の演説に沸き、ビルの崩れる表情に揺れる。
悪役である捜査官も単純でない。赤ん坊を抱えながら書斎に招き、葉巻を共に吸い馳走する。単なる仕事上の扱いを超えている。フーバーににじり寄られたときの間合いの取り方。そして組織の闇に侵食され、軽々と一線を超えていく。
2人の奇妙な寄り合いが、互いの弱さを増長しあって、悲劇が生み出される。他人にはわからぬこと。実話ベースにありがちの実映像や後日談。しかし、ここまでこっちに目がけてドスンとくるものもない。自分のことを棚にあげて、レッテル貼りに忙しいか?
音楽やカメラワークも見どころ多し。ジェンダー意識も何気に織り込む。政治的なテーマ設定に伝える事実の重要性を背景に、人間ドラマを描ききる。文句なしの傑作。
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