劇場公開日 2022年6月17日

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「原作は素晴らしいが…」バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0原作は素晴らしいが…

2022年6月19日
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鑑賞方法:映画館

テレビ番組として放映された『シャーロック』の劇場版。テレビ版は観ていなかったが、原作は、子供時代から大好きな、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズということで鑑賞。中でも人気を博す、『バスカヴェル家の犬』をモチーフにしたミステリー・サスペンス。

2つの誘拐事件に連続殺人事件と、なかなか重い内容の展開であり、その舞台となるのが、離島に佇む洋館の大豪邸。そこに集いし登場人物も、早々と死んでしまう大富豪で豪邸の主を筆頭に、常軌を逸した車椅子の妻、遺産を狙う子供達、怪しげな執事、そして、なぜか豪邸のリフォームを請け負う業者と、ミステリーとしては、鉄板とも言えるシチュエーション。

そこに、最近起きた大富豪の娘の誘拐事件の真相を突き止めるように、依頼されたのが、ホームズとワトソンならぬ、探偵の獅子雄と若宮。豪邸内で潜入捜査をする間にも、その島に昔から伝わる黒犬の祟りに擬えた、新たな殺人事件が起きる。そして、事件の真相を突き止めていく中で、17年前に起きた誘拐事件との関りが浮かび上がってくる。

主演のディーン・フジオカの衣装は、ホームズのマントを模しているのだろうし、感情に揺さぶりがあるのも、ホームズの性格と合わせているのだろう。また、常に客観的に見守る態度の精神科医・若宮役の岩田剛典は、ホームズの助手・ワトソンをイメージしているのもよくわかる。

出演者もなかなか豪華。誘拐される娘役には新木優子、執事役に椎名桔平、他にも広末涼子、村上虹郎、佐々木蔵之介、小泉孝太郎、稲森いずみ等が脇を固めている。その分、初っ端から、犯人像も何となく見えてしまうのも事実。

物語の内容も、出演者も悪くないのだが、今ひとつテレビ番組の延長でしかないと感じてしまうのはなぜだろう…。劇場で同じお金を払って『トップ・ガン』を観た後だけに、日本映画の物足りなさを感じてしまう。同じような背景でのカットばかりで、舞台にしても、ロケにしても、掛ける所にお金がかかっていないのが、見え見えでもある。離島の孤島というのに、普通の街が出てきて、現実離れした、祟りに纏わるホラー・ミステリー的な様子も影を潜めている。

原作自体が1889年のイギリスで起きた事件なだけに、本作の設定が、全てにおいて、重厚感が伝わってこなかったのが残念だ。

bunmei21