「監督独自のリサーチが弱すぎる」太陽と踊らせて Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
監督独自のリサーチが弱すぎる
セレブもおしかけるという、名前はよく聞くイビサ島。
しかしながら、映画の舞台は大人数の人気スポットではなく、空港にもほど近い最南端の小さなビーチ。
最先端のクラブシーンからは背を向けて、ジャンルにこだわらず、独特の選曲で楽しませる英国人DJがいるという。
とまあ、テーマは面白かった。しかし、作品としてはダメだろう。
なんといっても、ほぼすべてインタビューで、ダラダラと構成しているのがダメである。
他にも何人か出てくるが、どういう立場の人間なのかもよく分からない。
監督独自のリサーチが弱すぎるのだ。イビサ島の歴史すら、ジョンの口から語らせている。
土地について説明し、イビサ島の音楽シーンの歴史と現在を紹介し、その上でジョンのDJを位置づける、そういうきちんとした構成に乏しい。
難しいだろうが、本作は単なる“イメージビデオ”である。“好き”だけで映画を作ってはいけない。
尺が許す限り、ノーカットでレストランの様子をじっくりと映してもよかったはず。
音楽の話なのだから、音楽で語らせよ、ということだ。
自分のような素人には、ジョンの特徴ですら全然分からない。
とはいえ、ジョンのコメントには面白いものもある。
帰宅時にはクラシックを聴いたりするそうだ。7~8時間もビートの効いた音楽を流していると、さすがに“こりごり”するらしい。
アナログレコードをたくさん持っているが、もはや、かけることはないという。デジタル派で、USBメモリで十分なのだとか。
ジョンは、イビサ島の変質を嘆く。もう愛着も薄れたかのような印象すらある。
そういうところも、イビサ島の現在を絡めて触れて欲しかった。
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